古今集の話は度々書いてきましたが、春や夏の到来は「匂い」で気付き、秋の到来は「音」で気付くケースが多いようです。
五月待つ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする(読み人知らず)秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(藤原敏行)これらは古今集の中でももっとも有名な二首ですが、一首目は夏の巻とは言え季節的には春から初夏にかけてでしょう。
今年の東京は天候が不順で、7月はやたら暑かったかと思うと8月は割と涼しく、9月に入ると珍しく台風が直撃して気温が上下にぶれて、季節感が若干混乱しています。鈴虫などの虫の声が既に徐々に静かになりかけているのに、未だにツクツクホウシやヒグラシの鳴き声も聞こえたりします。やがてこれらの音が全てなくなり静かになると、完全に夏の名残りは消え、冬がすぐ近くに迫ります。このように音が徐々に「減って行く」(diminish)ところが秋の季節感の骨格でしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。