日本の金融の問題を作ったもっとも重大な理由は「集中」ではないかと考えています。1400兆円と言われる個人金融資産のうち、郵便貯金だけに250兆円、簡保には120兆円もあります。郵貯、簡保も含めた大手金融機関を上から順番に10社も数えると恐らく1400兆円の半分ぐらいがあるのではないでしょうか。そしてそのお金の投資先の判断を下している人達は、似たような教育を受け、似たような背景を持った、数十人の人達ではないでしょうか。全国民のお金の50%と、全国民の0.01%に満たない人達。それでは流石に投資先が偏ります。人は必ず間違いを(少なくともいつかは)起こすものです。一度は正しい判断をしても、常に正しいとは限りません。戦後の規格大量生産を進める時代にはそのような資金配分方法は効率的だったかも知れません。しかし現代のような、常にダイナミックに状況が変化し、かつ多様化が進んでいる時代には、今までのような集中型の金融の仕組みではリソースの最適配分が出来なくなってきているのでしょう。それが経済を閉塞させ、不良債権を作り続けている一大原因だと、私は考えています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。