英フィナンシャルタイムズの8月27日の記事『The year the rich went wild for gold』。

富裕層(ファミリーオフィス)の現物の金の需要が爆発的に増えており、世界の主要な金庫オペレーターの金の保管容量が限界に達し、金庫の拡張計画が必要な状況に追い込まれているとか。

世界最大の金ETF、SPDRゴールド・シェア(GLD)は現物の金の裏付けがある=残高に見合う量のゴールドが、製造番号まで特定されたうえで金庫に保管される商品設計ですので、保管コストがかからないETFをもてばいいのでは?とも思うのですが、どうやら富裕層らは現在の金融システムにも不信を募らせており「個別にシリアルナンバーが割り当てられた本物の自分の金塊」を求める動きが広がっているのだそうです。しかし、それを保管する金庫のキャパシティを超えてしまっているとは、どれ程の買いなのか?

WGCの試算によると、ファミリーオフィスは、その取引を目立たなく行うために、OTC(相対取引)で取引するのですが、今年前半の彼らのOTCでの買いは571トンにのぼり、ゴールドの全需要の20%を占めるとか。571トン…。

ちなみにゴールドの年間生産(採掘)量は3500~3600トン。生産量の15%強が富裕層の金庫に吸い込まれていく計算ですね。今年前半だけで、ですよ。

この動きは何を意味しているのでしょうか。確かに米国の債務は8月に40兆ドルの大台を超え、歳出が税収を年間2兆ドル以上上回る構造が続いています。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、2025年の世界の軍事支出は約2兆9,000億ドルで、11年連続の増加となっていますが、世界的な地政学リスクの高まりも不気味です。そして日本では長期金利3%超えが大きく報じられましたが、米国の長期金利上昇も懸念材料ですね。

教科書的には、名目金利の上昇は無利子資産であるゴールドにとって逆風ですが、このところ金利高でもゴールドが崩れる気配はありません。この金利上昇を悪い金利上昇だと不安に思う富裕層が金現物を保有しているということなのでしょうか。