週末のテレビでポンペイの話を見ました。栄華を誇った古代都市ポンペイは西暦79年にベスビオ火山の噴火によって一夜にして灰の下に埋没したのですが、そのこと自体よりも、ポンペイの全ての家庭に当時「骸骨」の絵が掛かっていたという話の方がとても興味深く思えました。ラテン的な享楽主義の色合いが強かったポンペイでは、毎日をちゃんと楽しく暮らす為に、「自分達はいずれ死ぬのだ」ということを常に忘れないように骸骨の絵を掛けていたそうです。面白いですね。英語の「mortal」(モータル)の語源はラテン語で「死」を意味する「mort」だそうですが、「いずれ死ぬべき運命だから」という意味が、否定的ではなく肯定的な意味で使われているのでしょう。
1963年の核実験停止条約締結時のケネディー大統領の演説の最後も「我々は皆で小さな星に住み、同じ空気を吸い、子孫の将来をいつくしみ、そして我々は皆モータルである。」という言葉で締められています。「死ぬ」ということへの哲学的な認識がやはり文化圏によって微妙に違うようで興味深く思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。