週末のテレビでポンペイの話を見ました。栄華を誇った古代都市ポンペイは西暦79年にベスビオ火山の噴火によって一夜にして灰の下に埋没したのですが、そのこと自体よりも、ポンペイの全ての家庭に当時「骸骨」の絵が掛かっていたという話の方がとても興味深く思えました。ラテン的な享楽主義の色合いが強かったポンペイでは、毎日をちゃんと楽しく暮らす為に、「自分達はいずれ死ぬのだ」ということを常に忘れないように骸骨の絵を掛けていたそうです。面白いですね。英語の「mortal」(モータル)の語源はラテン語で「死」を意味する「mort」だそうですが、「いずれ死ぬべき運命だから」という意味が、否定的ではなく肯定的な意味で使われているのでしょう。
1963年の核実験停止条約締結時のケネディー大統領の演説の最後も「我々は皆で小さな星に住み、同じ空気を吸い、子孫の将来をいつくしみ、そして我々は皆モータルである。」という言葉で締められています。「死ぬ」ということへの哲学的な認識がやはり文化圏によって微妙に違うようで興味深く思います。