2025年9月の日米財務大臣声明にもあったGPIF等への言及

片山財務大臣が7月10日の閣議後の記者会見で、「家計やGPIFをはじめとする年金基金による日本の金融資産に更なる投資をしていただくという方向で後押しをする方策を追求したい」と述べると、円資産への投資が促進されるとの期待から債券価格上昇(利回り低下)、円高という反応となった(図表1参照)。このようにGPIFによる投資の相場への影響に注目するという発想は、2025年9月11日に発表された日米財務大臣共同声明などにも見られたものだった。

【図表1】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「両者(日米の財務大臣)は、年金基金などその他の政府の投資主体による海外への投資は、引き続きリスク調整後のリターンや分散化の目的で行われ、競争上の目的のために為替レートを目標とはしないことに合意した」。

「競争上の目的のために為替レートを目標とはしない」とは、分かりやすく言うと「通貨安誘導を行わない」という意味だが、そのために通貨安誘導を目的とした為替市場への介入や金融・財政政策発動のけん制をしており、GPIFなどの外貨建て運用も同様にけん制していたわけだ。

ベッセント米財務長官登場から見られるようになった考え方

GPIFも含め、政府の投資主体による投資が為替相場に与える影響についてもけん制するという趣旨の言及は、2025年6月に公表された米財務省の為替報告書にも見られたが、おそらくベッセント氏が財務長官に就任して以降、初めて出てきたものではないか。

そうしたことを踏まえると、7月10日の片山大臣による「GPIF発言」も、ベッセント米財務長官自身、またはその周辺からのアドバイスだった可能性や、2025年9月の共同声明などがヒントになっていた可能性があるだろう。

160円超える円安阻止を日米連携で模索

日本の通貨当局は、ゴールデンウィーク中に米ドル高・円安が160円を超えたことを受け、2024年7月以来の米ドル売り・円買い介入を再開した。この介入は、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率を見ると、2022年、2024年ほど米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強くない中で行われた(図表2参照)。これは、もはや160円を大きく超える円安は日本国内では許容できないという判断によるものだった。

【図表2】米ドル/円の5年MA乖離率と為替介入の関係(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

こうした背景もあることから、2024年までのような日本の単独介入だけでの円安阻止は、今回は難しいかもしれないという自覚が当局内には、以前からそうした認識があった。このため、今回の円安阻止は、「単独介入+α」が必要であり、GPIFなどの活用は「+α」候補の一つと考えられる。

片山財務大臣や三村財務官は、「日米の当局はかつてないほど緊密な関係」と繰り返しているが、今回の「GPIF発言」も、そうした緊密な日米連携の影響が見え隠れする。そうであれば、円安阻止・是正のための「単独介入+α」候補として、日米や日米韓による協調米ドル売り介入なども検討されている可能性はあるのではないか。