東京の街の中心部は首都高速道路が幅をきかしています。どうしてこれだけ密に高速道路が重要な地域のビルの間を縫えたのでしょうか?よく見ると首都高速道路はその多くの部分がかつての水路の上を通っていて、未だにその下には川が流れていて多くの橋が残っています。かつて首都高速道路の計画を立てている時に、「一体どこに建設するのだ?」という質問に対して、東京都のある役人が「江戸時代からある水路の上に建てれば土地を収用する必要もないし簡単である」と提案した結果であるそうです。江戸は水路の巡る美しい街でしたが、こうしてその景観は一瞬の内に変わって行ったそうです。勿論私はかつての街並みを知りませんが、タクシーに乗っている時などに、昔のままに残っていれば良かったなと思うことがママありました。しかし最近思うのですが、逆にもし首都高速が水路の上に建設されていなければ、今頃東京の中心部の全ての水路は暗渠となり、橋もなくなり、かつての面影はどこにも探せなくなっていたかも知れません。ある原因が、思わぬ結果に到ることはよくあるものです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。