千秋楽は良かったですね。生憎外に出ていたのであとからニュースでしか見られなかったのですが、横綱の前日からの経緯と決意、そして優勝決定戦で勝った時のあの鬼のような顔。更に首相の朴訥(ぼくとつ)とした言葉。「痛いのを我慢して、よく頑張った。感動した。おめでとう。」
日本一強い男に対して、日本の政治の責任者からのなまの祝辞。そして場内の歓声。いや中々のショウでした。私は涙腺が弱くてすぐに感動してしまうのですが、人を感動させるものとはなんでしょう?たしか安吾が日本文化私観で書いていたと思いますが、とにかく速く走るためだけに作られたレーシング・バイクは、たとえ見た目はいろいろな機械が剥き出しに交差したりしていて醜くても、やはり見る者の心を打つ。贅肉を削ぎ落とした目的を持った存在自体に感動がある。文学も同様で人を感動させるために何かを装飾して書くのではなく、感動的な人生や思想を持っていれば、それが隠そうとしても文章に滲み出て心を打つのだ、というようなこと、感動は目的ではなく結果であるというような、そんなことを安吾は書いていたと思います。人を感動させるような、そんな仕事を我々も出来ればと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。