うるかって御存知ですか?私の酒好きは二升飲みだった私の母方の祖父からの遺伝がもっとも強いようなのですが、彼は富山県高岡市の人で、庄川や神通川で鮎釣りを楽しむ釣り人でもありました。と言っても実際には鮎を釣るという行為自体よりも、場所を見つけたり、餌や仕掛けを作るのが得意だったようです。一場所、二餌、三仕掛け、と言いますから、まぁ本格派の釣り師だったのかも知れません。料理と一緒で、釣るよりもその前の準備の方が大切なのでしょうが、彼の場合にはもう一つ大切な仕事が釣りのあとにあったようです。鮎のはらわたや子で塩漬けを作ることです。これを「うるか」といい、日本酒に滅法合う、中々手に入らない珍味です。からすみでもなく、いかの塩辛でもなく、うるかはうるかです。詳しくは知らないのですが、秋に漬けて、今頃から食べられるのでしょうか。本来はその年の間に食べるのでしょうが、昔うっかり冷蔵庫の奥に数年放ったらかしにして置いたものを見つけて食べてみたことがありますが、これはこれでやたら美味かったのを覚えています。釣りが好きで結果としてうるかを作っていたのか。酒が好きで、その最上のつまみを自ら作るために場所を探して、餌を作り、鮎を釣っていたのか。今ではもう分かりません。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。