「レートチェック」が示した単独での円安阻止困難

2026年1月23日、米ドル高・円安が160円に接近する中で、日米の通貨当局は為替介入の前段階とされる「レートチェック」を行った(図表1参照)。日本の当局は、2022年以降断続的に円安阻止の為替介入を行ってきたが、それはあくまで日本単独での動きだった。それが今回、「レートチェック」とはいえ、結果として日米協調の形となったのは、これまでのような日本単独では、160円程度での円安阻止は出来ないとの判断があったことを感じさせる。

【図表1】米ドル/円の4時間足チャート(2026年1月9~27日)
出所:マネックストレーダーFX

日本の当局は、最近も円安けん制を継続している。3月30日、米ドル高・円安が160円を超えると、実質的な為替政策の責任者である三村財務官は、「この状況が続けばそろそろ断固たる措置も必要になる」と語った。「断固たる措置」とは、為替介入の意味と認識されていることから、この発言はさらなる円安進行となった場合の円買い介入の可能性を示唆したものと受け止められた。

ただ「レートチェック」で明らかになったように、今回日米の当局は160円程度での日本単独での円安阻止は出来ないと判断している可能性があるのではないか。そうであれば、あくまで160円程度での円安阻止にこだわるなら、「レートチェック」同様に実際の米ドル売り・円買いの為替介入も最初から日米協調で行われる可能性はありそうだ。ただ、その場合は円安を止めるにとどまらず、一転米ドル急落のきっかけになる懸念もあるのではないか。

米「レートチェック」後に急拡大した米ドル売り

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションから試算)は、1月23日の「レートチェック」が行われる直前は小幅な買い越しだったが、「レートチェック」の後からは売り越しに転換した。その上で約1ヶ月後には売り越しが20万枚以上に拡大した(図表2参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

これまでの実績からすると、米ドル売り越しの20万枚以上は「行き過ぎ」懸念が強い。その意味では、円安けん制の「レートチェック」は短期間に米ドル「売られ過ぎ」となるほどの米ドル売り急増をもたらしたことになる。

こうした中で、ベッセント米財務長官は、「断じて米ドル売り介入を行っていない」と述べるとともに強い米ドル政策に変わりないことを再確認した。つまり、円安けん制から一転米ドル安けん制を余儀なくされるようになった。以上のように見ると、円安阻止で日米当局が米ドル売り・円買いの協調介入に動いた場合は、円安が止まるにとどまらず、逆に「止まらない米ドル安」の始まりとなる可能性もあるのではないか。

長期トレンドが米ドル安へ転換の可能性

米ドル高・円安傾向が続いているにもかかわらず、円以外の通貨に対しては米ドル安が目立っている。米ドルの総合力を示す実質実効相場は2025年1月のトランプ政権発足以降はほぼ一本調子で下落、1月には過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)まで下落した(図表3参照)。

【図表3】米ドル実質実効相場と5年MA(1995年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

経験的には、この5年MAを大きく割り込むようなら、一時的な米ドル安ではなく、長期トレンドの米ドル安への転換の可能性が高まる。その意味では、米ドル/円からは分かりにくいものの、米ドル自体の地合いもかなり脆弱になっている可能性がありそうだ。そう考えると、円安阻止の日米協調介入が実現した場合は、それが一転して新たな米ドル安の始まりのきっかけになる可能性もあるのではないか。