今日はちょっと軽い話を。むかし米国債や米国機関債(及びそれらのオプション)のトレーディングをしていた頃、と言うかまだ駆けだしのトレーダーだった頃のことです。
ソロモンからゴールドマンに転職して、短期間「ゴールドマン流」を学ぶためにNYオフィスにおりました。一般にゴールドマンのトレーダーの方が良く言えば知的、悪く言えば線が細いなという感触を持っていましたが、一人男気の強い、荒削りな大男がいて、「あぁ、ここにもこういう奴がいる」と私は何故か嬉しくなり、とても仲良くしておりました。彼は中東の今は民主制になったある国の旧王家の出でした。しかしそういう出自を感じさせないナイスガイでした。ある日私は彼に「趣味は何だい?」と聞くと、彼は「オークション(入札)さ」と答えました。彼は機関債のトレーディングの責任者だったので、やはりこいつは本当に仕事に燃えている、なんていい奴だろうと考え、「ふ〜ん。やっぱりファニー・メー(米国機関債市場でもっとも大きい発行体)かい?」と聞くと、曰く。「何言ってんだよ!クリスティーズだよ。」
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。