私は毎年、帰省しています。親戚一同と顔を合わせ、土地や年齢を超えた会話を交わすことで、自分の視野が広がるのを感じます。そうした時間は、いつも不思議と内省的な気持ちにさせてくれます。
今年も帰省し、意識的に内省する時間を取りました。実家へ向かう道中では考えを巡らせたり、積読になっていた本を読んだりして過ごしました。その一冊が、横山光輝『項羽と劉邦』です。
『項羽と劉邦』では、多くの登場人物が権力欲や嫉妬、疑心暗鬼といった感情に突き動かされています。そのため、偏見のない「虚心坦懐」な姿勢を貫く人物は少なく、その欠如が物語の展開に大きな影響を与えています。
項羽は勇猛果敢な武人でしたが、自尊心が高く、他人の意見を素直に受け入れる虚心坦懐さに欠けていました。象徴的なのが「鴻門の会」です。范増の忠告を聞き入れず、劉邦を逃がしてしまった判断が、結果として自身の破滅へとつながっていきました。
一方の劉邦は、項羽と比べると出自も個人としての能力も劣っていました。しかし、蕭何、張良、韓信といった優れた人材の意見を虚心坦懐に受け入れ、その能力を最大限に引き出しました。かつて敵対していた人物であっても、才能があれば登用する姿勢を持っており、その公平無私とも言える態度こそが、天下統一の大きな要因となりました。
多くの歴史小説を読むと、身分や立場にとらわれず、先入観を持たずに、広く平らな心で人や意見に向き合うことの重要さに、改めて気づかされます。
