昨日はダボス会議の肯定的な面を観察してみましたが、今日は敢えて否定的な側面について考えてみましょう。ここはやはりアングロ・アメリカンやユダヤ人による、アメリカと西欧を中心とした世界観の中での「世界経営者会議」です。確かに世界中からの人々を受け入れています。誰であっても発言は出来ます。そういった意味で機会は広く与えられています。しかし仮に機会が公平に与えられても、そのことによっては必ずしも結果の平等は担保されないことを銘記すべきでしょう。或る文化における議論の形式の中で、その言語で議論が行われる時に、その文化・言語圏の外側の人には大きな負担があります。そのような負担、ギャップが存在するということの認識がなければ、真のコミュニケーションは達成されず、一方の自己満足で終わってしまう可能性があります。J・F・ケネディー大統領は、この点についての深い理解を示唆する演説を行なっていますが、一見世界のコミュニケーションがたやすくなったと見える今日にこそ、このことに関する再認識が必要ではないでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。