一昨日までにお話ししてきたように、我が国に於いては夜間市場に対する潜在需要はかなり高いと考えており、また情報較差の大きい夜間であるからこそ、個人投資家の利益を配慮して慎重にその仕組みを作る必要があると考えています。マネックスは10月6日にPTS(私設取引システム)の認可申請を行い、来年1月のサービス・インを予定して準備を進めています。私たちの構想には2つの大きな特徴があります。
一つはその株価が夜間市場の間変化せず、既に決定しているその日の終値一本である点です。大勢の方の需要は帰宅されたあとにその日のマーケットをチェックされて、「あぁ、この値段であれば買っておきたかった。」或いは「売っておきたかった。」というものではないでしょうか。また東証のような大規模な市場監視機能を持てない場合は、本来であれば特別な情報などにより値が大きく動く時でも売買停止はかかりにくいですから、逆にそのような時は取引が成立しない方が安全であると考えました。即ち終値から動かないので、市場が動くと自動的に売買が成立しにくくなる訳です。
もう一つの特徴は、売買は弊社のお客様である個人投資家の間での付け合わせだけであり、証券会社も機関投資家もポジションを一切取らないことです。そうすることにより、個人投資家全体という世界を考えると、一切富の移動が外界との間で発生しないので、中長期的に見て個人投資家の利益保護に資するのではないかと考えました。これは全く新しい発想の試みですが、正当な理由があると思っています。勿論東証が本格的な夜間市場を始めれば、そこに統合して行きたいと考えています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。