今日の東京は明らかに冬が近づいていると知らされる重い曇天でした。「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどれかれぬる」というのは藤原敏行の歌ですが、以前にも書いたことがあるように、古今集の中には微妙な匂いや音で季節の変化をいち早く知ったり、ある人を思い出したりする歌がよくあります。新しく生まれるものから発せられる匂いによって春を感じ、どこか侘びしい風の音によって秋の到来を知る。
このような感性はデジタル映像や信号が反乱する現代に於いては徐々に廃れて行くのでしょうか。今日のように明らかな状況で冬を感じる、しかも秋をしっかりと認識する間もなく・・。
鈍感になるとどんどん鈍感になってしまう一方のような気がするので、もっと意識的に匂いや音を探したいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。