今回のオリンピックを見て思ったことを一つ。(これはある読者の方の示唆に考えさせられた部分が多くあります。)南北朝鮮の同時行進など良い話題もある一方で、ラドゥカン選手の金メダル剥奪とか、篠原選手の決勝戦の判定を巡る問題であるとか、後味のスッキリしない問題もいくつか提起されました。思うにオリンピックは壮大な、「不完全」な世界的イベントなのではないでしょうか。審判団も、運営組織も、一時的に集められた或る意味での寄せ集めであり、その哲学、方針、規準などにつき十分な統一がなされていないのではないでしょうか。それは絶対的な記録を目標に努力し闘っている各選手にとっては、納得のいかない結果を招く遠因となり兼ねない一方で、ろくに泳いだことのないアフリカの水泳選手の泳ぎが世界じゅうに放映されたり、先に述べたような政治的解決を待たない事柄の前倒しの実施などを可能にしているのではないでしょうか。不完全であるが故に試され得る可能性というものもあるでしょう。しかしこれらのチャレンジを可能にしている大前提として、世界の比較的な平和(基本的に重大な戦争が行われていないこと)があることを忘れてはいけないでしょう。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。