美容医療のために韓国を目指す旅行者はコロナ禍前の12倍に

最近、「医療ツーリズム」という言葉をよく見かけるようになりました。新型コロナウイルス感染拡大の前に頻繁に触れていましたが、コロナ禍で一時下火になって、それが再び浮上しています。

医療ツーリズムとは、患者が自分の国の医療機関にかかるのではなく、海外の病院を利用するために渡航することです。同じ機会に現地での観光を兼ねるケースが多いことから「ツーリズム」と呼ばれます。

代表的なものが韓国のケースです。韓国の福祉当局のまとめによれば、2023年に医療を目的として韓国を訪れた外国人は前年比2.4倍の60万人に達しました。コロナ禍前の2019年と比較して12倍に拡大しています。

国・地域別では日本から韓国を訪れる割合が最も多く18.7万人。全体の30%強にのぼります。次が中国の11万人、米国の7.7万人と続きます。

診療科ごとの集計では、全体の52%が皮膚科と美容外科で占められます。日本からの18.7万人のうちの16万人(85%)がこの2つの診療科を受診しています。美容整形の技術が高く、しかも費用が安いというのが人気の秘密です。

アジアや中東では国家戦略として推進する国・地域も

韓国のように医療と観光をセットにして国家戦略として推進している国・地域もあります。タイ、インド、シンガポールなどがそうです。それらの国は相対的に安い治療費を掲げています。ほかにもマレーシア、トルコ、UAE、メキシコなどが受け入れ国として知られています。

医療技術はテクノロジーの進化によって日進月歩で発達しており、アジアや中東地域でも先進国と遜色のない治療が受けられるようになってきました。米国やイギリスは公的な保険制度の補助も少ないため、治療費の自己負担率の高さを嫌って患者自らが周辺国の医療に目を向けるという時代の流れもあります。

費用のかかる再生医療が発達すれば、世界の富裕層を中心に医療ツーリズムの流れはさらに拡大していくでしょう。

市場規模は1000-1200億ドル、日本のシェアは1%未満

世界の医療ツーリズムの市場規模は1000-1200億ドル(15-18兆円、2023年)とされています。今後は年平均10%程度の成長が予想され、2030年には3000億ドル(45兆円)に達するとも見られます。

日本における医療ツーリズムの市場はまだ小さく、世界全体はシェア1%にも満たない状態です。地方都市の中には外国人向けにがん治療や再生医療など、最先端の医療技術をアピールする方策を打ち出していますが、現時点では発展途上にあります。

コロナ禍を経て、世界の富裕層の間では健康に関する意識がますます高まっています。インバウンド熱は拡大する一方という状況で、今後の進展に期待したいところです。

医療ツーリズム関連銘柄をピックアップ

以下に医療ツーリズムに関連する企業をピックアップしてみます。

双日(2768)

2003年に日商岩井とニチメンが経営統合して誕生した。総合商社としては第7位の規模になるが、ボーイング[BA]社の日本総代理店として航空機に強く、取り扱い実績は1000機以上にのぼり日本一を誇る。再エネ、木材、肥料、海外での自動車販売にも強い。2025年5月にシンガポールで医療サービスを手掛ける「ロイヤルヘルスケア」を子会社化。再生医療を軸に高度医療サービスの提供に力を入れる。

【図表1】双日(2768):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年8月28日時点)

リゾートトラスト(4681)

会員制リゾートホテル「エクシブ」を全国で展開。自社で開発したリゾート施設の会員権を法人、個人の富裕層に販売。地価上昇、株高もあって会員権需要は強い。「サンクチュアリコート」シリーズが好調。3-4泊の複数日の宿泊を前提に開発しており、がん検診や心疾患の検査、食事改善など健康・予防医療のメニューが人気を集めている。三菱商事との間では子会社を通じて医療ツーリズムの合弁会社を設立。真の健康長寿社会を目指す。

【図表2】リゾートトラスト(4681):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年8月28日時点)

ウェルス・マネジメント(3772)

不動産投資ファンド。ホテルに特化したファンドであることが特徴で、物件の取得、運用から売却までワンストップでサービスを提供できる「ブティック型の独立系アセットマネジメント」が最大の特徴。2006年にリーマン・ブラザーズのファンド運用会社として創業。2015年からホテル運営事業をスタートさせた。高級ホテルを活用して、アンチエイジング、先進医療分野など医療ツーリズムへの進出も打ち出している。

【図表3】ウェルス・マネジメント(3772):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年8月28日時点)
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