昨晩のF1(第13戦、ベルギー・グランプリ)は痺れました。マクラーレン・メルセデスを駆るハッキネンは痛恨のスピンによって順位を落としましたが、後半じりじりと追い上げ、レース終了4周程前でフェラーリのシューマッハを捉えました。2台が前方を行く周回遅れに追いつく直前にハッキネンはシューマッハのスリップストリームに入り、周回遅れを抜く際にサッとスリップストリームから出て鮮やかにシューマッハを抜き去り、そのまま逃げ切って優勝です。
ハッキネンの技量と度胸も素晴らしいものですが、最後の数周の2台の速さを見ると明らかに車(或いはタイヤ)の性能に差があったように見えます。車好きはどうもイタリアを贔屓目に見て応援する傾向がありますが、最近はル・マンを見てもF1を見てもドイツ勢が優勢です。ドイツ人のシューマッハがイタリアのフェラーリの救世主であるというのも皮肉な話ですが、「やっぱりレースと言えばフェラーリ。血統が違うよね。ポルシェとかメルセデスのような新参者とはどこか違うんだ。」なんて曖昧なことをモーター・ジャーナリストと言われる人もしゃあしゃあと言ってしまうのです。私もそう思っていました。ところがテリー伊藤さんが最近ある車雑誌で次のようなことを書いて、私の頭の中のどこかにあった曇りを一掃してくれました。「ポルシェ製の宇宙船とフェラーリ製の宇宙船。君はどっちに乗るか?」このような「曖昧な郷愁」と「冷静な評価」を一刀両断にするテリーさんの才能はずば抜けてますね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。