音楽は雑食で何でも聴きますが、もし無人島にCDを一枚だけ持って行くとしたらどれを持って行くか考えてみたことがあります。一枚というのは中々難しくて、出来れば3枚にしたいと考えたのですが、外し難いと感じるのはキース・ジャレットのケルン・コンサートというアルバムです。
1975年、ECMという西独(当時)のレコード会社による録音です。ECMはマンフレット・アイヒャーというプロデューサーが率いている通好みのレーベルで、透明度の極めて強い新しいジャズを、とにかく極限まで透明に録音することで有名で、私のとっても好きなレーベルです。ECMの作品であれば安心して聞ける、或いは聞いたことのないアーティストだが聞いてみようと思ったものです。このケルン・コンサートはライブ録音のせいか、録音は他の作品に比べると平凡ですが、その中身がとにかく秀逸です。キース・ジャレットというピアニストは必ずしも私の好みではないのですが、ケルン・コンサートでの彼のピアノとのコラボレーションはいけます。因みにソロです。アルファ波の出るような穏やかな曲から始まり、まるで一つの映画の中における人の感情の起伏を辿るような乗りでピアノともつれ合い、それでも一貫してきりっとした自制的な締まりがあるのですが一瞬だけ俗な世界に落ちかけ、そしてまた静かな世界に戻って行く。何度聞いても素晴らしい作品です。やはり一枚だけ持って行くなら、このアルバムですね。