148円への円急落でも円買いを拡大=先週(6月23日週)のヘッジF
ヘッジFの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、6月24日時点で13.2万枚の買い越し(米ドル売り越し)となり、1週間前よりわずかだが買い越しが増えた。これは、米国の突然のイラン核施設空爆を受けて原油価格が高騰、6月23日に一時148円まで米ドル高・円安になったことからするとやや意外な結果だった(図表1参照)。

米ドル/円の120日MA(移動平均線)はこの頃148円程度で推移していたが、この120日MAは、ヘッジFの円買いポジションの損益分岐点の目安と見られていた(図表2参照)。120日MAまで米ドル高・円安になったということは、円買いポジションの損失転落リスクが高まった可能性があっただろう。そうであれば、損失拡大を回避するために、むしろ円買いポジションを大きく減らす可能性が考えられたが、逆にわずかながら円買いポジションを増やしていたわけだ。

不合理なヘッジFの円買い=ベッセント長官は満足か
このように合理的には説明しにくいヘッジFの動きだが、これもベッセント財務長官が主導する通貨政策の立場からすると望ましい結果ということになるかもしれない。ベッセント長官は公式には否定しているものの、日本に対して米国の貿易不均衡を助長する懸念のある円安の是正を要請している可能性があるからだ。
ヘッジFは、記録的に大幅な円買いポジションになっていると見られているため、それを減らす動きが本格化した場合大きく円安が進む可能性がある(図表3参照)。ベッセント長官が主導する円安是正と逆行する可能性があるような円買いポジションの大幅圧縮を、ヘッジFは意識的に避けたということではないか。

トランプ政権開始後のヘッジFの動きは、このように合理的には説明しにくいものの、米通貨政策との連携と考えることで辻褄が合うケースが目立つ。たとえば、CFTC統計の投機筋の円買い越しは4月にかけて17万枚以上に急拡大した。前年までの円買い越しの最高が7万枚に過ぎなかったこと、そして金利差から不利な円買いといったことを考えると、合理的な理解を超えた動きでもあったが、それは160円近い水準から150円を大きく割れるまで円安が是正される動きの主導役を担ったわけだ。
予想以上に強い連携=ベッセント長官と出身業界
ところが、ヘッジFの円買いは、4月後半にかけて主にトランプ大統領の政策への不信感から「米国売り」が拡大し、米ドル/円も一時140円割れへ一段と下落する中では一服となった。この当時ベッセント長官などは「米ドル危機」に陥りかねないことへの警戒感を強くしていたとの見方もあった。その意味では、ヘッジFの円買い一服は、そのようなベッセント長官の懸念に配慮して意識的に控えた結果の可能性もあった。
ベッセント長官はヘッジF業界出身ということもあり、もともと両者の連携は注目されていた。実際に両者の間でどのような連携があったかは分からないが、少なくともベッセント長官の立場に立ってみると、ここまでのヘッジFの動きはかなり満足できるものだったのではないだろうか。