トランプ政権1期目の減税成立後に起こった「悪い金利上昇」
トランプ政権1期目の減税案は、2017年12月2日に上院で可決。その後下院との法案一本化を経て、12月22日のトランプ大統領の署名により正式に成立した。こうした中で米金利は財政赤字拡大への懸念などから大きく上昇、日米金利差(米ドル優位・円劣位)は急拡大に向かった。ただそれを尻目に、米ドル/円は年が明けた頃から急落に向かった(図表1参照)。

米金利上昇にもかかわらず米ドル/円が急落に向かう「悪い金利上昇」が起こったわけだが、その鍵になったのは米国株の動きだったのではないか。NYダウ、ナスダック総合指数など米国の主要な株価指数は、2018年1月下旬から下落に向かい、3月下旬にかけて約2ヶ月で1割程度の下落となった(図表2参照)。そうした中で米ドル/円も、米国株急落が一巡するまで金利差拡大を尻目に下落するところとなった。

株価急落は短期的「上がり過ぎ」反動ではなかったか?
ではなぜ、「トランプ政権最大の成果」とされた大型減税案の成立後、米国株は急落したのか。その一因は、短期的な「上がり過ぎ」の反動だったのではないか。ナスダック総合指数など主要な米国の株価指数は、90日MA(移動平均線)かい離率が10%前後まで拡大すると、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まる。2017年12月22日のトランプ減税の成立から約1ヶ月後、ナスダック総合指数の90日MAかい離率が10%程度まで拡大したところから株価は急落に向かったのだった(図表3参照)。

株価の短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まる中で、減税成立を受けた米金利上昇は、むしろ「上がり過ぎ」修正のきっかけになったのだろう。そうした中で、米ドル/円は上がる金利ではなく下がる株価に追随し、日米金利差拡大でも米ドル/円は急落するという「悪い金利上昇」となったのではないか。
足下でも強まってきた米国株「上がり過ぎ」懸念=2018年と似た構図
足下では、トランプ政権2期目における減税案の議会審議が続いている。これが成立すると、これまで見てきた政権1期目のケースと同様にやはり米金利は上昇するだろうか。一方の株価は、ナスダック総合指数などはすでに先週の段階で90日MAかい離率が一時10%以上に拡大するなど短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなってきた。
こうした中での減税案成立に伴う米金利上昇は、株価の「上がり過ぎ」修正のきっかけになる可能性がありそうだ。そうなった場合は、2018年1月からの「悪い金利上昇」に似た構図、つまり金利差拡大を尻目に米ドル/円は下落に向かう可能性もあるのではないか。