ショッピファイ[SHOP]、オンラインストア開設・運営のプラットフォーム提供
スノーボード製品のオンラインストアからスタート
ショッピファイ[SHOP]は電子商取引(EC)プラットフォームを開発しています。オンラインストアの開設と運営に必要な機能一式をサブスクリプション方式でストアのオーナーや運営者に提供し、収入を得るビジネスモデルです。
ウェブやスマホの画面を通じてネットショップの利用者が目にするフロントエンド業務では、商品の表示や管理、販売などに必要なソフトウエアを提供します。裏方業務にあたるバックエンドでは、商品の在庫、注文の処理、決済、配送の手配、新たなバイヤーの発掘、顧客管理、商品の調達、分析、資金調達などを一元的に管理するソフトウエアを通じ、一連の機能を使えるようにしています。
もちろんカスタマイズも可能で、オンラインストアのオーナーはショッピファイと提携するスペシャリストや専門業者に依頼し、デザインや機能を改良することもできるのです。
ショッピファイを創業したのはドイツ生まれのトビアス・リュトケ氏で、結婚を機にカナダに移住し、2004年にスノーボード製品のオンラインストアを立ち上げました。自身のプログラミングスキルを生かしてプラットフォームを開発し、ストアの開店にこぎ着けましたが、評判になったのはスノーボード製品のストアではなく、プラットフォームのほうでした。
リュトケ氏はオンラインストア用のプラットフォーム開発に軸足を移し、ショッピファイを創業。順調に顧客を増やし、2015年にニューヨーク市場に上場しています。
大手企業から小規模事業者まで幅広い顧客が利用
ショッピファイの顧客は多様で、その数は175ヶ国・地域で数百万に上ります。食品のクラフト・ハインツ[KHC]や動画配信のネットフリックス[NFLX]など大手企業が利用するケースもありますが、小規模事業者が多いとみられます。こうした事業者はEC市場で圧倒的な影響力を持つアマゾン・ドットコム[AMZN]のエコシステムに取り込まれずに自前でオンラインストアを運営することも可能です。
このため、ショッピファイは「アマゾンキラー」とも呼ばれていた時期もあったようです。リュトケ氏もアマゾンを意識していたようで、以前に「アマゾンは帝国を築き上げようとしている。ショッピファイは帝国への反逆者(アマゾンに取り込まれないオンラインストア)に武器を提供している」と語っています。
業績面では成長著しい新興企業の例に漏れず、売上高が大きく伸びています。前年比の業績がたどれる2013年12月期以降、2023年12月期まで11年連続で2桁超の増収を達成しています。
アマゾン・ドットコム[AMZN]、Eコマース業界のガリバー
アマゾン・ドットコム[AMZN]は言わずと知れたEコマース業界のガリバーで、米国での市場シェアは他を寄せ付けません。もちろん日本や欧州でも存在感が大きく、もはや生活インフラの一部といえそうです。
ただ、最近ではそんなガリバーを悩ませる事態が世界各地で起きています。それが中国系の越境ECの台頭です。中国での生産能力とサプライチェーンを武器に格安製品に強みを持つ「Temu」や多様なファストファッション製品を提供する「SHEIN」などが存在感を高めています。
報道によると、アマゾンよりもTemuの利用者数が多いという国が増えているようです。米国や日本ではアマゾンの利用者が多いのですが、欧州ではTemuが優勢です。
こうした中国系越境ECの台頭にアマゾンは対抗策を講じており、その一つが日用品の販売の強化です。洗濯洗剤など生活に不可欠な製品を重点的に販売し、アマゾンで購入する頻度を引き上げると同時に購入総額を増やすのが狙いです。単価の低下につながりますが、越境ECの弱みである「時間的な制約下での機動的な対応」を逆手に取り、拡販を目指します。
越境ECの台頭という懸案を抱えているにもかかわらず、アマゾンの業績は好調で、2024年7-9月期決算は売上高が前年同期比11%増の1588億7700万ドル、純利益が55%増の153億2800万ドルでした。
特に生成人工知能(AI)関連の需要が大きく伸びたことで、クラウドサービスが急成長し、AWS(アマゾンウェブサービス)部門の営業利益が50%増の104億4700万ドルに達しています。オンラインストア部門は売上高が7%増の614億1100万ドルで、2024年4-6月期の増収率である5%に比べて伸びがやや加速しています。
イーベイ[EBAY]、越境ECのプラットフォームを運営
イーベイ[EBAY]は、190を超える国・地域の売り手と買い手をつなぐオンラインのマーケットプレイスを運営しています。世界中に一括出品できる越境ECのプラットフォームとして知られており、2024年9月末時点の出品数は約21億点、アクティブバイヤー(過去1年間に購入した実績のある買い手)数は1億3300万人、2024年7-9月期の総流通額(GMV)は183億600万ドルに上ります。
海外展開に強みを持つECだけに国際ビジネスの売上比率が大きいのも特徴です。2024年7-9月期決算は売上高が前年同期比3.0%増の25億7600万ドルで、国際ビジネスの割合が49%とほぼ半分を占めます。
イーベイのプラットフォームは新品や中古品を手軽に出品するツールとして使い勝手が良く、オークション形式での出品も可能です。売買仲介の手数料収入、決済手数料、広告収入が主な収益源です。
決済を巡っては以前、オンライン決済を手掛けるペイパル・ホールディングス[PYPL]のサービスの利用が義務付けられていましたが、イーベイは2021年にすべての取引の決済を自社で管理する仕組みをスタートさせ、柔軟性を重視する方向に転換しました。買い手に支払い手段の選択肢を増やし、ビジネスの効率化を促すのが狙いです。
ベスト・バイ[BBY]、米国とカナダで家電量販店を運営
ベスト・バイ[BBY]は米国とカナダで家電量販店を運営しています。2024年1月末時点の店舗数は1,125店で、内訳は米国が965店、カナダが160店です。
2024年1月期決算の売上高は前年比6.1%減の434億5200万ドル、純利益が12.5%減の12億4100万ドルで、地域別の売上高では米国が全体の92.3%、カナダが7.7%を占めます。
米国での製品別の売上高比率は、パソコン・モバイル端末が42.2%、テレビを含むオーディオ・ビジュアル機器が30.0%、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電が13.6%、ドローンやゲーム機などのエンターテインメント製品が7.6%です。
ECビジネスにも積極的で、米国でのオンライン事業の売上高は131億200万ドルと全体の32.7%を占めています。パンデミックの影響がほとんどなかった2020年1月期にはオンライン販売の割合が19.0%にとどまっていましたが、2021年1月期には43.1%に急上昇しています。その後、年を追うごとにこの割合は低下していますが、それでも米国事業の売上高の3割超を占める重要分野となっています。
ウォルマート[WMT]、オムニチャネル戦略を積極推進
ウォルマート[WMT]は世界最大の小売事業者です。「エブリデー・ロープライス(毎日安い)」を旗印に掲げ、米国を中心に事業を展開します。海外事業は中国、インド、メキシコなど18ヶ国で手掛けています。とにかく売上高の規模が大きく、ECでも米国ではアマゾン・ドットコムに次ぐ第2位の市場シェアを誇ります。
スーパーマーケットのECといえば、実店舗とオンライン販売を融合するオムニチャネル戦略が中核で、もちろんウォルマートも重点的に取り組んでいます。顧客はオンラインで注文した商品を、自宅で受け取ることも店舗でピックアップすることも可能です。また、メープルベアー[CART]が運営する食品宅配の「インスタカート」といった外部のサービスを利用した買い物の代行にも対応します。
一方、ウォルマートは海外のECビジネスにも積極的です。中国ではアリババグループ[BABA]の競合であるJDドットコム[JD]と提携し、一時は合弁事業を展開していました。
また、インドではEC大手のフリップカートを傘下に収めています。インドのEC市場でのシェアはフリップカートが首位で、アマゾン・インドが2位。親会社の代理戦争と考えれば、米国市場とは逆にウォルマートがアマゾンを上回っています。