企業が大きなグループの一部となるグループ化が一部で進行しているようにみえます。異なる背景を持った企業が統合する動きは、人的リソースや顧客ベースなどを補完したり効率化できるのでいいことだと思います。その一方で過剰な資本や流動性を背景に、超大企業が他の企業に資本金を含めた流動性を供給すると同時にグループに内生化する動きもありますが、これは非効率な動きのような気がします。
この二つの動きはどちらも世界的に散見できます。日本における銀行の統合は前者の例ですし、ドイツ銀行がバンカーズ・トラストを吸収したのは後者の例だと思います。いわゆるインキュベーターの動きは、やり方によっては後者の例にもなり得ると思います。人的リソースやテクノロジーの流動性は低い筈です。流動性の低い専門的な集団が、流動性を得るためにあるグループに引っ越すよりは、専門的な集団が独立を維持して、流動性を外部から得る方が理屈にあった解法に思えます。公開資本市場はその考え方を進めたものであり、或いは本来公開資本市場はそうあるべきです。資本市場と囲い込みとは真っ向から相反する概念であることをもっと理解すべきだと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。