方向は円安、それとも円高どちらに動くか
前回トランプ政権時の米ドル/円は小動きに終始
2016年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、米ドル/円はほんの1ヶ月程度の間に101円から118円まで一気に20円近くも急騰する「トランプ・ラリー」が起こった。これは派手な言動が目立つトランプ氏のイメージからも違和感のないものだっただろう。
しかし、正式に2017年1月からトランプ政権が始まると、その後の4年間のトランプ大統領の任期中に、米ドル/円はこの「トランプ・ラリー」の値幅内の小動きに終始するところとなった(図表1参照)。ではそれはなぜだったのか。
金利差が為替相場の変動率(ボラティリティ)に影響
トランプ政権が始まる前、2016年12月からFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げの本格化に動き始めた。2016年11月に0.5%だった政策金利のFFレートは、2年後の2018年12月には2.5%まで引き上げられた。これを受けて、2008年の「リーマン・ショック」以降ほぼゼロと小幅な状況が長く続いた日米政策金利差は、米ドル優位が2%以上に拡大するところとなった。
足下の日米政策金利差米ドル優位がなお5%近くもの大幅であることに比べると、当時の金利差がいかに小幅だったかが分かるだろう。金利差は基本的に為替相場の変動率(ボラティリティ)に大きく影響する。つまり、前回のトランプ政権時代は、小幅な金利差が続いたことが、米ドル/円の小動きが続いた大きな要因だったのだろう。
そしてその観点からすると、なお大幅な日米金利差が続いている今回の場合、トランプ政権中の米ドル/円は、前回から一転大きく動く可能性があるのではないか。では大きく動くなら、それは米ドル高・円安方向になるのか、それとも米ドル安・円高方向になるのか。
円安・円高どちらの方向に動くのか
トランプ氏の選挙公約は、大型減税や関税の引き上げなど金利上昇をもたらしやすいものが目立つが、その場合米ドル高・円安方向に大きく動くことになるだろうか。ただし、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率は足下でもプラス2割以上に拡大しており、米ドル/円のこれまでの変動上限に近い位置にある(図表2参照)。この状況下で米ドル/円が大きく動くと仮定すると、それは米ドル安・円高方向のポテンシャルが高いように感じる。
トランプ氏の選挙中の発言に、米ドル高・円安への強い批判があった。その言葉通り、米ドル高・円安是正に動くなら、米ドル安・円高方向に大きく動くというイメージにはなる。しかし、そうではないのなら、政策は金利上昇をもたらすものの、それが株安・米ドル安をもたらす「悪い金利上昇」になるシナリオも考えられるだろう。