昨日、基準地価が発表されました。全国の全用途平均価格は1.4%、このうち住宅は0.9%の上昇と、緩やかで健全な上昇に見えます。
ところが、地域ごとに見ていくと、上昇が激しい箇所も多々みられます。例えば、東京23区では、中央区の12.4%を筆頭に平均6.7%もの上昇です。なぜ中央区か。答えは湾岸タワマンです。
湾岸といえば1980年代のウォーターフロント地区。芝浦の「ジュリアナ東京」「芝浦ゴールド」(これらは港区)等がディスコ・カルチャーをリードしました。さらに、1990年代の容積率緩和で中央区の湾岸エリアに「タワマン銀座」なる地域が誕生し、その後も湾岸エリアはタワマンの聖地として不動の地位を維持し、昨年は「晴海フラッグ」も完工しました。
昨日基準地価を伝えるニュースでは、街角の人々が「都内は高くて手が出なくなった」と口々にコメントし、これにも1980年代のデジャブ感です。80年代後半には、こうした声が高まり、「狂乱地価」が社会問題化した結果、不動産融資総量規制導入からバブル崩壊へと繋がりました。
では、あの頃のマンション価格は、今と比べてどれくらい「狂乱」だったのでしょうか。不動産経済研究所によれば、昨年の都区部のマンション価格は、平均実収入の13倍で1989年のバブルピークの12.9倍にほぼ並びました。しかも、最近都心の一等地では、200億円(虎ノ門ヒルズ)などという物件もあり、バブル期に市場に出ていた「スーパー億ション」推定最高値数十億円を上回っています。
もちろん、当時は首都圏の平均分譲マンション上昇率が30%を超えるような時期もあったので、現在の地価上昇率はまだ安心という声もあります。ただ、住宅問題は、現在の都市部の少子化問題にも繋がっているという意味で、バブル期以上に社会問題化しやすい面もあると思います。
生活の礎である住宅が都心で2桁%上昇し続けるようなら、何らかの対策が打たれる可能性はあるでしょう。過去の失政の歴史があるので、対策は、あるとしても相当緩やかなものになるでしょうし、政策金利も数十bpの引き上げでは殆ど影響はありません。それでも、対策が出てくれば熱を冷ます効果はあるでしょうから、流行ど真ん中のタワマンの購入にはリスク感応度を高めておく必要があるかと思います。