ゴールドマン・サックスのパートナーの一人に、オプション理論と、モダン・ポートフォリオ理論を確立したフィッシャー・ブラック博士がいました。残念なことに既に他界されましたが、本来であればノベール経済学賞を取っていた筈です。私も個人的に直接話す機会も何度かありましたが、実際のトレーディングに関してもなかなか造詣の深い観察をされていたのが印象的です。
その中からいくつか御紹介したいと思います。

一つは、トレーディングをする際に、持ち値であるとか、それまでの経緯を考慮に入れることは、理論的に意味がないということです。あと一歩で持ち値まで戻ると待っているうちに値が下がり始めてしまって、損切りのタイミングも逸してしまうということもよくありますね。
アメリカにおいて、一時大変強いトレーディング・ハウスであった「オコナー」(のちにスイス銀行と合併した会社です)では、毎日の終わりにトレーダー全員のポジションは全て会社全体のポジションとして吸収され、まとめられたポジションはトレーダーとは別のリスク管理者が一括して管理し、各トレーダーは次営業日はまたポジション・ゼロから一日を迎えたそうです。中々含蓄がありますね。
他の話はまた次回に御披露致します。