C&Fロジホールディングス(9099)巡る買収合戦
最近、上場企業によるM&A(企業の合併や買収)やTOB(株式公開買い付け)のニュースを耳にしない日はありません。2024年前半で最も印象に残ったTOB案件は、C&Fロジホールディングス(9099)に対するSGホールディングス(9143)からのTOBです。
C&Fロジは低温食品物流の大手です。この案件は当初、AZ-COM丸和ホールディングス(9090)がSGよりも先に、C&Fロジに対してTOBを提案していました。TOB価格は1株当たり3,000円でした。
買収される側のC&FロジもこのTOBに合意しており、すんなりと事態が進むとみられていましたが、そこにSGがTOB価格1株5,740円を提示して、後から割って入る形となりました。結果としてはC&Fロジも後出しのSG案に乗り換える形で決着し、買収金額は最終的に1200億円強まで膨らみました。
C&Fロジは2015年に、チルド物流に強い名糖運輸と冷凍食品輸送を得意とするヒューテックノオリンが統合してできた会社です。
一方のAZ-COM丸和は「桃太郎便」で知られる物流の大手企業です。今回のTOBは断念せざるを得ませんでしたが、今後も低温食品物流の分野に進出する意向を持っています。
単身・共働き世帯増加で市場拡大
何が低温物流に対する需要を生み出しているのでしょうか。背景には、単身世帯や共働き世帯が増えている社会からの要請があると考えられます。単身世帯が増えることで、コンビニやスーパーで手軽に買えるチルド・冷凍食品、生鮮食品の需要が増えています。
矢野経済研究所によれば、日本の低温物流市場は2022年度で1兆7724億円(販売高ベース)。コロナ前の2019年度と比べて3.6%増加しています。
単身世帯、共働き世帯の増加に伴って、夕食を家で食べる「おうち消費」が増えており、そこに冷凍・冷蔵食品などの低温物流の需要が増える素地があると考えられます。今後も低温物流をはじめとして、冷凍・冷蔵庫など機器類の需要も安定して増えることが予想されます。
以下に低温物流関連の銘柄を挙げてみます。
業績好調、海外展開…低温物流関連4銘柄
ニチレイ(2871)は最高益水準
冷凍食品のニチレイ。家庭向け、業務用冷凍食品では国内トップメーカー。傘下企業には加工食品の「ニチレイフーズ」、水産の「ニチレイフレッシュ」、バイオの「ニチレイバイオサイエンス」を有する。低温物流も強く、同じく傘下の「ニチレイロジグループ」を中心として冷蔵倉庫では業界首位の座を維持している。コロナ禍の行動規制によって冷凍食品を中心に「おうち消費」の特需が発生し、史上最高益を記録。冷凍食品技術の向上もあって、平時に戻っても最高益更新のペースを維持している。冷凍食品に対する人気は衰えておらず、今期も業績好調が続くと見られる。
鴻池運輸(9025)は10ヶ国以上で展開
創業は明治13年(1880年)、鴻池組を発祥とする総合物流企業である。「鴻池運輸」という物流企業のような社名を冠しているが、その実体は「KONOIKEグループ」として製鉄、プラント、医療器材、日用雑貨などの生活関連、空港の地上業務など、総合商社に近い範囲の事業を有している。同時に食品メーカーを数多く顧客に持つことから、業界トップクラスの冷蔵倉庫の収容力を持ち、冷蔵保管から配送、加工、倉庫管理システムまで、低温物流サービスをトータルで提供する。海外でも中国、ベトナム、タイ、ミャンマーなど10ヶ国以上で事業を展開。コロナ後は業績好調を維持。
18期連続増配のハマキョウレックス(9037)
独立系の物流企業。単にモノを運ぶだけではなく、企業から預かった貨物を保管、管理して配送まで提案する「3PL」(サードパーティー・ロジスティクス)を提供し、アパレル業界を中心に、食品、医療機器、ホームセンター、ドラッグストア向けに幅広い事業を展開。中でも食品流通に関しては、食品メーカーからスーパー、コンビニ、外食産業の店舗まで、24時間365日、「ジャスト・イン・タイム」で配送を行っている。徹底した鮮度保持を使命としており、今期も史上最高益を更新する見通し。前期まで18年連続で増配を実施している。
キユーソー流通システム(9369)、4つの温度帯で配送
1966年に創業。親会社はマヨネーズで有名なキユーピー(2809)で、現在でも株式の42%を有するが、ビジネス上の取引はさほど多くない。創業以来、食品物流の分野では数々の工夫を凝らし、今では常温(マヨネーズ、缶詰)、定温(ワイン、チョコレート)、冷蔵(牛乳、ヨーグルト、サラダ)、冷凍(冷凍食品など)の4分野に業務を集中。4つとも異なる温度帯での管理が必要で、それぞれの食品に応じた適正温度による管理が強み。全国に150ヶ所を越える事業拠点を有し、7,000台の車両を活用して4温度配送をトータルで実現する。今期の営業利益はコロナ前の水準を大幅に上回る見通し。