インドの中央銀行が英国に保管されていた金準備100トンを自国インドへ移したことが報じられています。世界の中央銀行が保有する金準備の多くはNY連銀と、英国イングランド銀行に保管されています。インドは英国の植民地だったこともありイングランド銀行が金準備保管場所となってきましたが、なぜ今、この内100トンを自国に輸送したのか。その理由として「保管場所の分散」等が挙げられていますが、なぜ分散する必要があるのか明らかではありません。
インド中央銀行の外貨準備における金保有は9%程度ですが、保有量は800トンを超えており、世界の金準備保有ランキングの10位に入っています。インド中央銀行は近年、金の保有量を増加させており、前年比では27%近く保有量が増えています。インドメディアは、今後数ヶ月以内に同量の金が国内に輸送される可能性があると報じています。
脳裏をよぎるのが、ロシアのウクライナ侵攻の制裁として、ロシアが保有する6400億ドルものゴールドを含む外貨準備の半分相当の凍結です。これによりロシアは外貨準備資産を自由に動かせなくなりました。これを機に、世界の中央銀行やSWF(政府系ファンド)が金準備を自国に戻す動きが広がっているのです。欧米の対立軸にある国家は資産凍結リスクを恐れ、米国債などのドル資産を減らして金準備を増やしていることはもはや新味のあるニュースではなくなりましたが、金準備が欧米に保管されていては意味がありません。金準備は自国で保管するというのが新たな常識となるのかもしれません。