2024年4月30日(火)8:50発表
日本 鉱工業生産指数(速報値)

【1】結果:基調は変わらずも、生産・出荷指数が反転

【図表1】鉱工業生産指数(季節調整済、2020年=100)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

2024年3月の鉱工業生産指数の4項目(生産、出荷、在庫、在庫率)は、前月比で上昇しました。生産指数と出荷指数については1月、2月と工場稼働停止を理由に、下押し要因であった自動車関連工場が再開したことを契機に、全体としては3ヶ月ぶりに上昇となりました。

先行きは生産指数において4月、5月も上昇が見込まれているものの、5月半ばに発表予定の3月確報値(補正値)は-1.0%の100.1ポイントに修正されることが見込まれていることもあり、「一進一退ながら弱含み」と前月に引き続き据え置かれました。

【図表2】鉱工業生産指数の推移と先行見通し(季節調整済、2020年=100)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:在庫の水準感に注目

2ヶ月連続で低下していた生産指数・出荷指数は改善しました。生産指数の寄与度をみると、工場の再開を理由とした自動車工業が+1.13%ポイント、半導体製造装置などの生産用機械が+0.98%ポイントとそれぞれプラス転換しました。

【図表3】鉱工業生産指数 前月比寄与度の推移(季節調整済、%、%ポイント)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成
※ 未発表の寄与度は推計値にて試算

注目点は今回前月比+7.1%と大きく上昇した在庫率指数の推移です。3月は全15業種で在庫率が上昇しました。在庫率指数のトレンド(図表4、点線は同指数の7ヶ月移動平均線)は、2022年より上昇していることが確認でき、目先はピークアウトした様相です。

今回大きく上昇していることから、先行では再び上昇していく可能性があります。企業としても在庫の積み上がりは需要の弱さを判断する指標として生産活動を弱めるインセンティブとなることから、注目度が高い指標です。

在庫循環図をみると、今回の結果では在庫の調整局面であることがわかります。発表では一部の業種にて在庫削減に積極的に取り組まれているとの言及もされており、直近の在庫率の上昇が一時的なものであれば在庫調整が進むと考えられますが、在庫の水準感には引き続き注視が必要です。

【図表4】鉱工業在庫率指数の推移(季節調整済、2020年=100)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成
【図表5】在庫循環図
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

【3】所感:外部環境の不確実性から生産も弱含む可能性を考慮

今回の結果では、生産の持ち直しが確認できました。一方で、同日発表された小売売上高は前月比-1.2%と市場予想よりも弱い結果であり、個人消費は依然として伸び悩んでいます。消費については、現時点での実質賃金がまだ上昇していないことから防衛的な行動の結果として想像できます。これらは賃上げの結果が6、7月のデータにて確認でき、消費活動にも反映されると考えられますが、現時点では経済の下押し圧力とみられています。

生産活動の持ち直しはポジティブな印象を受けますが、金融政策や円安の進行など外部環境の不確実性が高まっていることもあり、企業の生産活動も見通しよりも下方に推移する可能性が高いと考えられます。そのような不確実性もあり、基調判断も一進一退ながら弱含みといった内容であると考えられ、今後の動向には引き続き注視が必要です。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太