今朝の日経新聞で、賃貸住宅の家賃を示す指数が、2023年に25年ぶりに上昇したことが報じられています。上昇率は前年比0.1%とごくわずか、とはいえ、これは大きな変化です。消費者物価指数(CPI)に含まれる家賃は、主に家主の聞き取り調査から行い、経年劣化などの品質調整は行われません。加えて日本では、借地借家法(旧借地法)が大正時代以来、借り手を強く保護してきました。これらの影響で、数年前までは、CPIの家賃項目は、「下がるのが当たり前」、という見方がされてきました。では、家賃が上がり始めた今、マンション投資を検討すべきでしょうか。

実は、欧州等では、契約の時点で、家賃は原則としてインフレ率に連動すると取り決めるなど、家賃が「インフレ負け」しにくい仕組みになっています。昨年見た南欧のマンションでは、家賃を1年で10%以上上げたとのことでした。契約に沿った措置ですし、不満なら引っ越すということにも慣れているため大きな混乱は見られないようです。

対する日本のマンション投資の利回りは、家賃の硬直性からインフレ負けしやすいことになります。さらに、近年は、サブリース契約という落とし穴もあります。不動産会社が間に入って家賃を保証する仕組みですが、家賃が上昇しても、投資家に対して満額を還元するのかは不透明です。利回りが下がってしまうため、投資用物件は自己居住用住宅ほどには上昇していないとも聞きます。

デフレが長く続いたため、こうした日本の住宅投資の弱点は表面化しませんでした。しかし、現在は、賃貸マンション投資よりも有価証券の方が、総じてインフレ耐性が高く、手続きが簡単で、個人なら税制メリットもある… となると、マンション投資には不利な環境です。もちろん、現物のマンション投資なら、いざとなれば自分や家族が実際に住めますし、条件次第では投資目的の借り入れもできるというメリットもあるので、個人的には大変興味がある分野です。

状況が変わればその力を再び発揮するでしょうが、インフレがもう少し沈静化するか、制度や慣行が変わるまで、もう少し様子を見たいと思います。