ウィキペディアによると「スタッフが書いた記事を紹介し、外部からのニュースや意見を集約した右翼金融ブログ」「『金融業界の最先端のニュース、噂、ゴシップ』の情報源」とありますが、投資家であれば1度くらいは「ZeroHedge」の発信する記事を目にしたことがあるでしょう。陰謀論を広げるメディアだ、との非難もあり、2022年には米国の情報当局者が「ロシア政府のプロパガンダを広めている」と批判しています。
そのZeroHedgeが3月28日、Xのアカウントで「JPMorgan Warns Putin Can Push Oil To $100 By September To ~Pressure Biden Ahead Of Elections~」とポストしました。「JPモルガンが、『プーチン大統領が9月までに原油価格を100ドルに押し上げ選挙を控えたバイデンに圧力をかける』可能性があると警告した」というものです。
ZeroHedgeの記事は鵜呑みにできない、というわけでリサーチしてみると、3月27日にJPモルガンが出した「Oil Market Weekly」レポートにありました。「ロシア政府は石油会社に対し6月末までに900万バレルの生産目標を確実に達成するため、第2四半期の原油生産量を削減するよう命じた。仮に額面通り、政策、供給、需要の反応がないと仮定すると、ブレント原油価格は4月に90ドル、5月には90ドル台半ば、9月には100ドル近くまで上昇する可能性がある」というもので、JPモルガンは「選挙を控えた米政権にプレッシャーをかけ続けることになる」とレポートしています。
実際、足元でWTI原油価格は80ドル台半ばへ、ブレント原油は80ドル台後半から90ドル台へと上昇基調を強めています。原油上昇の影響もあり週間米国レギュラーガソリン小売価格は3月最終週に1ガロン3.5ドルにまで上昇してきました。全米自動車協会は、今夏の国内ガソリン価格は4ドルに達する可能性があると指摘しています。1ガロン4ドルを超えるインフレ下では現政権は選挙に勝てないというジンクスも大統領選挙にはあるとされています。
原油が本当に100米ドル近くまで上昇するなら、原油決済通貨であるドル需要は高まります。なにより日本の貿易赤字拡大による円安のリスクも…。ZeroHedgeの記事、ヘッドラインはやや誇張が過ぎますが(JPモルガンのレポートにはプーチンの名前などでてこない)一次ソースを探すきっかけにはなりました。ここからの原油、米ガソリン価格上昇は大統領選挙の行方を大きく揺るがしかねないだけでなく、ドル円相場にも大きな影響をもたらしますので、目が離せませんね。