この2、3年、ドル円レートと金利の関係に若干異変が起きています。

通常、ドル円レートは中長期国債利回りからインフレ率を引いた実質金利差に応じて動くとされています。ドルを買って米国債に投資すれば日本国債よりも高い金利が貰えます。が、米国の方がモノの値段が高くなっている、つまり、その国での通貨の価値が低くなっているので、高い国債金利からインフレ率を差し引かなければ真の通貨価値の比較はできないためです。

ところが、こうした実質金利と為替の相関は常に成立するわけではありません。直近でも、コロナ禍以降しばらくは、日米の実質金利差とドル円レートの相関が大きく低下しました。一方で、名目金利と為替レートの関係は比較的安定的に高くなっています。

これは何故でしょうか。インフレが上昇し、推計が難しくなっているのも一因でしょう。あるいは、これだけ高いインフレ率は久々なので、インフレへの認識や反応が薄れてしまっているのかもしれません。人々は、一般に見えやすい名目値に引きずられやすい、という研究もあります。

しかし、市場が正常化すれば、ファンダメンタルズに戻るはず。現在も徐々に実質金利との相関が戻ってきた印象です。日本のインフレ率は過去よりは高止まりすると考えられます。世の中のデフレマインドがかなり後退したことや、賃金の上昇に勢いがついているためです。高めのインフレ率は、実質金利を押し下げ、円安要因にもなります。

当面は、インフレ率の動きに、これまで以上に注目したいと思います。