前向きなM&A仲介を行う企業に追い風
M&A(企業の買収・合併)仲介で、事業承継のマッチングに特化した企業の好決算が相次いでいる。1月30日に2024年8月期の第1四半期(2023年10~12月)を発表したM&A総研ホールディングス(9552)の営業利益は33億5300万円(連結初開示、前年同期の単独比2.4倍)となった。
その他、M&Aキャピタルパートナーズ(6080)の同第1四半期営業利益は5億9100万円(同79%増)となった。M&A仲介には敵対的な買収を仕掛ける企業もあるが、好調なのは前向きな仲介を行う上場企業だ。
事業承継型の中小企業M&Aの潜在需要が2035年には13.5兆円まで増加する見込み
日本M&Aセンターホールディングス(2127)が先に発表した決算で開示した、決算説明資料が注目されている。矢野経済研究所が算出とした資料では、事業承継型の中小企業M&A(売り上げ規模1兆円超)の潜在需要が2035年に9万5,234社と、2021年の8万591社に比べて18%増えると試算されている。金額では2035年までに13.5兆円まで増加するとしている。経営者の高齢化で事業承継を考えるケースが増加すると見ているのだろう。
また、2023年9月に「中小企業M&Aガイドライン」が約3年ぶりに改訂されたことも後押し要因になっているとの見方がある。経済産業省では初版策定時から3年程度の間に、新たに見られるようになった課題に対処するために改訂をした。
事業者にとってわかりにくく複雑になっていた手数料(最低手数料を含む)に関する留意点を明記し、事例を追加。また、M&A支援機関における人材育成や倫理観の情勢に関する項目も新設した。さらに、複雑な契約形態については、仲介契約締結前の重要事項の説明に関する対応の新設、などが行われたという。これにより、株式を上場しているなど、コンプライアンス体制整備が進んでいるM&A仲介企業にとっては優位性が出てくると見られる。
M&A仲介は経営者の高齢化や後継者不足に起因するケースが多いが、大手仲介業者にとっては上場企業の子企業再編・事業再編による大型案件の増加も追い風になっていると見られている。
上場企業の子企業再編・事業再編による大型案件の増加に伴い、今後の成長に期待できるM&A仲介企業銘柄6選
ここで、主なM&A仲介企業をピックアップする。
日本M&Aセンターホールディングス(2127)
中堅・中小企業のM&A仲介で最大手。業界のパイオニア的な存在。会計事務所などと連携して開拓した事業承継案件に強みがある。2021年に不適切会計が発覚。売上のかさ上げ不正などが多数あったと発表したが、厳しい目標設定が要因とされた。
その後、体制整備を進め事業改善。2024年3月期の第2四半期(10~12月)の営業利益は51億3000万円(前年同期比64.6%増)と急回復となっている。四半期ベースで過去最高の成約件数(300件)となり、利益率も大きく向上した。
M&A総研ホールディングス(9552)
M&A仲介サービスを展開。譲渡希望企業、買い手候補企業のいずれともアドバイザリー契約を結ぶ手法を展開している。独自に開発したAI(人工知能)、DXシステムの活用により、マッチング期間を短縮できる点が強み。
2024年8月期の第1四半期(2023年10~12月)の営業利益は33億5300万円(連結初開示、前年同期の単独比2.4倍)となった。通期計画72億円(前期比57.2%増)に対する進捗率は47%と高水準。M&Aアドバイザーの増加による成約件数増、大型案件の増加など成約単価も上昇している。
M&Aキャピタルパートナーズ(6080)
独立系のM&A仲介企業。傘下にM&Aによる企業譲渡に強いレコフを擁する。事業承継案件に強く、特に調剤薬局の顧客基盤が厚い。手数料は成功報酬体系が中心となっている。
山陰中央新報社と発行地域の企業紹介などで提携しており、2024年1月には福島民報社とも業務提携契約を締結。地元企業の事業承継で、経済活性化を図る。2024年8月期の第1四半期営業利益は5億9100万円(前年同期比79%増)となった。大型案件の成約増、成約件数増が要因になっている。
ジャパンM&Aソリューション(9236)
「相談されたら断らない」がモットー。企業規模や利益にとらわれず、中小企業を対象としたアドバイザリーサービスを提供している。三橋透社長は投資銀行などでM&A業務に従事していたが、本人の意向に関わらず、断らざるを得ない案件があったことから、2019年に同社を設立し、断らないM&A仲介を実践している。
2024年10月期に売上高9億1300万円(前期比21.3%増)、営業利益2億4500万円(同39.5%増)となる見通し。
ストライク(6196)
中小企業を対象にしたM&Aの仲介企業。公認会計士や税理士が経営主体となっており、東京の他に札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、高松、福岡にも営業所を有する。
2024年9月期の第1四半期(10~12月)決算では売上高36億7600万円(前年同期比86.6%増)、営業利益13億4500万円(同2.4倍)となった。通期の営業利益は70億3700万円(前期比35.3%増)を見込む。
オンデック(7360)
M&A仲介やアドバイザリー業務を展開。経営者やコンサル企業、地銀などとネットワークを構築。2万社以上の連携ネットワークに強みがある。
2024年11月期は売上高16億4200万円(前期比98.6%増)、営業損益2億3500万円の黒字(前期は1億9900万円の赤字)となる見通し。前期は停滞していたM&A仲介が、前期の第4四半期から事業承継軸に成約が復調傾向、現在は案件管理体制の見直しに着手している。平均報酬単価も改善。前期低迷の要因の1つである成約までの期間短縮のため、組織体制の変更を実施している。