「遅行指標」へ鈍い反応、その示唆とは?

10月6日に発表された米9月NFP(非農業部門雇用者数)は、予想が17万人増だったのに対し、それを大きく上回る33万人増だった。これを受けて、市場は米金利上昇、米ドル高の反応となったが、間もなく金利も米ドルも伸び悩む結果となった。

実は、前日の米失業保険申請件数発表後のプライスパターンも似た感じだった。結果が予想より強かったものの、その割に米金利上昇、米ドル高ともにすぐに行き詰まった(図表参照)。

【図表】米ドル/円の時間足チャート(2023年10月5~7日)
出所:マネックストレーダーFX

10月11日は、米9月PPI(生産者物価指数)が発表され、前年同期比は事前予想1.6%の上昇に対し、結果は2.2%の上昇と、予想よりかなり強い結果だった。それでも、米ドルの上昇は比較的限られたものとなり、米10年債利回りはむしろ低下した。

雇用関連統計、物価統計は、基本的に景気に対する「遅行指標」と位置付けられる。その意味では、このところ「遅行指標」に対する金融市場の反応の鈍さが目立っているということになるのではないか。このように、「遅行指標」に対して市場の反応の鈍さが目立つのは、基本的には相場の転換期に起こりやすい。典型例は、2022年11月前後だろう。

2022年11月初めに発表された米10月NFPは、事前予想の20万人増に対して結果は26万人増と大きく上回ったが、米ドル/円は反落となった。そして翌週、11月10日に米10月CPIが発表され、前年同月比が予想の8%上昇を大きく下回る7.7%上昇となると、米ドル/円は146円台から一気に140円割れ寸前の暴落に向かい「CPIショック」が起こった。これを受けて、市場では約32年ぶりに150円を越えるまで展開した歴史的円安はすでに終了し、円高へ転換したとの認識が一気に広がった。

以上から考えられるのは、「遅行指標」に対する市場の反応が鈍くなるのは、「それはすでに過去の出来事に過ぎない」として、相場には織り込み済みとの判断になるためではないか。別な言い方をすると、相場が転換期を迎えている可能性があるということになるかもしれない。

これを今回に当てはめると、7~9月期の米景気は、実質GDPが「5%成長」という「成熟した先進国」の米国では異例の高成長となった可能性があるが、それはすでに米金利の大幅上昇などで織り込まれ、この先はむしろそんな大幅な金利上昇が景気をどれだけ減速させるかに注目が移っているのではないか。

そうであれば、当面は米景気の先行き減速の「程度」によって、米金利低下および米ドル下落が軽度にとどまるか、それとも、より大きなものとなるかが焦点になっていくということではないだろうか。