2023年8月に世界最大の暗号資産取引所であるバイナンスが満を持して日本でのサービス提供を開始した。その取扱銘柄数は34種類と開始時点で国内最多を誇っており、レンディングサービスやNFT取引サービスなどその他のサービスも充実し、まさに黒船の来航である。リリース直後、果たしてどれほど新規口座開設の申込みが増えているかはわからないが、これまでグローバル版を利用していたユーザーも日本版に移行されるため相当数の口座を抱えていることが予想される。

後日に開催されたメディア向けの事業説明会ではバイナンスの日本戦略の一端が明らかになった。まずは早期に暗号資産の取扱い数を100まで増やし、第一種金融商品取引業の登録後にはグローバル版で人気のデリバティブ取引についても提供する予定とのことだ。また、すでに海外では自社ブランドで手掛けているステーブルコインについても、2023年6月に施行された改正資金決済法に則ってライセンスを取得し、パートナー企業と日本展開する方針である。

このようにバイナンスは日本の暗号資産市場に突如として現れた黒船とも言えるが、その内部事情を巡っては黒い噂も絶えない。米国では証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)から提訴されており、未登録商品の販売だけでなく、顧客資産の流用や相場操縦、ロシア制裁違反などの容疑までかけられている。また米国の司法省はこれらの詐欺容疑でバイナンスを訴追することを検討しているとも報じられている。

バイナンスは容疑を真っ向から否定しているが、こうした訴訟に対応するためのコストも膨らむ中で、大規模なリストラや新たな銀行パートナー探しを行うまでに追い込まれている。同社の事業や財務の状態が悪化している可能性は高く、もし当局による指摘が真実であった場合には、2022年に起きたFTXショックの二の舞になる恐れは否定できないだろう。あるいは全ての容疑を晴らして業界トップとしての立場を維持するのかもしれない。

果たしてバイナンスは日本に来航した黒船なのか、それとも”黒い”船なのか、訴訟問題の行方には引き続き注視が必要である。