トヨタ自動車好決算、グループ関連企業にも恩恵の波

2024年3月期の第1四半期決算発表が一巡した。おおむね堅調との見方が多いようだ。

大企業の中では時価総額首位のトヨタ自動車(7203)の好決算が話題となり、株価も2021年1月の上場来高値を更新した。自動車は部品など裾野の広い産業と言われる。トップに君臨するトヨタ自動車の健闘は、グループ関連企業のビジネス環境の改善を示すものとみることができる。キーワードは「半導体不足緩和による挽回生産」、「高付加価値車の販売好調」だ。

キーワードは「半導体」と「高付加価値」

トヨタ自動車の2024年3月期の第1四半期(4~6月期)決算は、売上高が10兆5468億円(前年同期比24.2%増)、営業利益1兆1209億円(同93.7%増)となった。連結販売台数は232万6,000台(同15.5%増)だった。

半導体の需給マネジメント力の改善に加え、生産現場などの改革なども寄与したとのこと。半導体不足緩和で挽回生産が進む。ハイブリッド車などを含む電動車の販売は同34.2%増となった。

損益面では資材価格の高騰が影響したものの、円安や製品ミックスの改善、値上げなどでカバーした。所在地別では北米が半導体需給改善、仕入れ先を含めた生産性向上活動などで利益が拡大。日本や欧州も順調だった。アジアも中国を除き伸びている。

通期予想に変更はなく、売上高38兆円(前期比2.3%増)、営業利益3兆円(同10.1%増)、1株利益190.4円を計画している。第1四半期時点での営業利益の進捗率は37.3%となっている。そこで、今回はトヨタ自動車に関連するグループ企業の銘柄をピックアップする。

豊田自動織機(6201)

トヨタグループの本家。世界首位のフォークリフト、エアコン用コンプレッサーなどに展開。エンジンや車載電池、トヨタ車の組み立てなどでも利益を上げる。

2024年3月期の第1四半期(4~6月)は売上高8894億円(前年同期比17.1%増)、営業利益525億円(同20.4%増)となった。自動車関連の売上高が同27.0%増と牽引している。トヨタ自動車から生産を受託しているSUV「RAV4」などが好調に推移した模様である。

通期では売上高3兆5000億円(同3.6%増)、営業利益1800億円(5.9%増)、1株利益628.0円を計画している。営業利益は過去最高益更新。第1四半期時点での営業利益の進捗率は29.1%であった。フォークリフトが冴えないが、自動車の挽回生産や円安が寄与する。為替前提は1ドル132円。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年8月17日時点)

デンソー(6902)

自動車部品メーカーで国内首位、世界でも2位。トヨタ自動車系だが、系列外の国内・海外企業との取引が多い。エンジン、駆動系、ADAS(先進運転支援システム)など幅広く展開している。

4~6月期の売上高1兆7128億円(前年同比21.0%増)、営業利益943億円(同48.3%増)となった。半導体不足緩和による車両生産の回復や円安、電動化、安全運転関連が寄与した。トヨタグループ向けの売上高は8898億円(同25.2%増)となっている。

通期の業績予想を上方修正。売上高は前回予想を4000億円上回る6兆7000億円(前期比4.7%増)、営業利益は同900億円上乗せの6000億円(同40.8%増)、1株利益148.2円を計画している。第2位四半期以降の為替前提は1ドル130円。販売増の他、合理化の進展や対応力の強化に加え、操業度の改善なども寄与する。部材やエネルギー高騰の影響が緩和する。なお、9月末割当で1対4の株式分割を実施する予定だ。

大手調査機関では「レクサスやアルファードなどの生産回復が追い風。電動化向けのインバータ、安全運転支援システムなどの搭載拡大によるクルマ1台あたりの付加価値向上も寄与する」などとしている。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年8月17日時点)

豊田通商(8015)

トヨタグループの総合商社。自動車関連事業が営業利益の約7割を誇る。原材料調達や物流、海外ディーラー展開などでトヨタ系の事業をサポート。EV向けではレアメタルの調達も担当している。

4~6月期の売上高は2兆5407億円(前年同期比7.0%増)、営業利益1137億円(同11.1%増)、当期純利益927億円(同23.9%増)となった。日本や北米の自動車生産の回復を背景に自動車部品の取り扱い増が寄与している。欧州を軸に海外自動車販売会社の取扱台数も増加している。アフリカでの自動車販売も好調とのこと。

通期は純利益のみの開示で3000億円(前期比5.6%増)、1株利益852.6円を計画している。純利益は前回予想に比べ200億円の上方修正。期初の減益予想が増益予想に転換。年間配当も前回予想比10円増配の年214円とする方針。株価は上場来高値圏での推移となっている。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年8月17日時点)

アイシン(7259)

トヨタ自動車系の自動車部品メーカー。AT(自動変速機)では世界首位。駆動系、エンジン周辺機器、ボディ関連に強みがある。

4~6月期の売上高は1兆1917億円(前年同期比19.4%増)、営業利益344億円(同5.2倍)だった。日米で自動車生産回復が寄与。欧州ではパワーユニットトレインの販売台数が増加している。日本ではさらに、モーター、ギア(減速機)、インバータが一体となったEV向け駆動ユニット「イーアクセル」が牽引したようだ。

通期業績予想に変更はなく、売上高4兆6000億円(前期比4.5%増)、営業利益1900億円(同3.3倍)、1株利益463.7円を計画している。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年8月17日時点)

トヨタ紡織(3116)

国内最大の自動車内装品メーカー。シートやドアトリムなどが主力。
4~6月期の売上高は4754億円(前年同期比35.7%増)、営業利益221億円(同6.5倍)となった。自動車の生産回復とともに、主力製品のシートの販売台数が前年比40万台増の217万台と大きく伸びている。SUVの伸びなど付加価値の高い製品の比重も拡大。

通期業績予想を上方修正。売上高は前回予想を1200億円上回る1兆8000億円(前期比12.2%増)、営業利益は同160億円上乗せの690億円(同44.7%増)、1株利益181.9円となる見通し。円安に加え、高級車種への部品供給増加などが要因となっている。

【図表5】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年8月17日時点)

豊田合成(7282)

トヨタ系の合成樹脂、ゴム部品メーカー。内外装部品やエアバッグなどに強みを持つ。
4~6月期の売上高2593億円(前年同期比23.8%増)、営業利益163億円(同5.2倍)となった。グローバルな生産台数増が寄与しており、エアバックなどが好調。予想に変更はなく、通期では売上高9200億円(前期比3.3%減)、営業利益400億円(同14.1%増)、1株利益193.0円を計画している。

この他、特殊鋼の愛知製鋼(5482)、パワステのジェイテクト(6473)の決算も好調だった。

【図表6】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年8月17日時点)