少し前から話題になっている「Die With Zero」という書籍を手にしました。テーマは、死ぬまでにいかに蓄えを使い切り、人生を豊かにするか。「デキュミュレーション(資産の取り崩し)」の実践編のような本です。年齢とともに、健康が低下し、物事への興味が失われていくので、その前にお金を遣おう、と説きます。夏を謳歌するキリギリスを横目に働き続けたアリの譬えを引用し、「アリはいつ遊ぶのか?」と問いかけます。
確かに、若い時期の貴重な時間を過度に労働に費やし、やりたいことを将来のために我慢するのはもったいない、という主張はもっともだと思います。一方で、わが身を振り返ると、薬やサプリも手放せなくなった上、深夜バスでも平気だった若かった頃に比べて移動にもお金がかかります。必要なお金は少なくとも一定の年齢までは増えるので、やはり、若い頃に多少頑張って金銭的な蓄えをしておくことの大切さは否定できないでしょう。
そう考えると、無理のない範囲の資産運用で、時間を費やさずに蓄えを増やすことがベストでしょう。遊んでいたキリギリスも、裏で投資をしていたら、冬の生活に困らないで済んだかもしれません。しかも投資を通じて学んだり楽しめたら、更にいいですよね。そんな投資キリギリス的生活を遅ればせながら目指したいと思います。
- 大槻 奈那
- ピクテ・ジャパン株式会社 シニアフェロー
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内外の金融機関、格付機関にて金融に関する調査研究に従事。Institutional Investors誌によるグローバル・アナリストランキングの銀行部門にて2014年第一位を始め上位。政府のデジタル臨時行政調査会、財政制度等審議会委員、規制改革推進会議議長、中小企業庁金融小委員会委員、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のアドバイザー等を勤める。日本経済新聞「十字路」、日経ヴェリタス「プロの羅針盤」、ロイター為替フォーラム等で連載。日経Think!エキスパート・コメンテーター、テレビ東京「モーニングサテライト」で解説。名古屋商科大学大学院 マネジメント研究科教授 東京大学文学部卒、ロンドンビジネススクールMBA、一橋大学博士(経営学)
著書:
『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、
『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
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