“We don’t need more digital currency… we already have digital currency, it’s called the U.S. dollar,”(我々にデジタル通貨はこれ以上必要ない。我々にはすでにドルというデジタル通貨がある。)

米国の証券取引委員会(以下、SEC)のトップを務めるゲンスラー氏が述べた言葉が暗号資産界隈で話題となっている。

つい先週、SECは業界最大級の暗号資産取引所であるバイナンスとコインベースを証券法違反の理由で提訴した。バイナンスについてはFTXグループと同様に顧客資産の流用などが疑われており、現在も調査が進められているが、同社はSECの申し立てに反発している。また、コインベースも代表のブライアン・アームストロング氏がSECを批判し、法廷で業界代表として当局と向き合う姿勢を示している。

2023年に入ってから米国ではSECによる暗号資産関連企業への取り締まりが続いており、かつてブームの中心にあった米国は今や暗号資産業界から敬遠される国となりつつある。実際に米国から欧州やアジアへと活動拠点を移す暗号資産ネイティブな企業は増えており、暗号資産の米国離れが徐々に進んでいる。

米国当局としては、大きな事件をきっかけに、これまでイノベーションの観点で野放しにしてきた暗号資産の問題を金融ルールに沿って正したいという考えだ。企業側は数ある暗号資産の証券性を否定しているが、数百銘柄と取り扱う中でそれを完全に否定できるものはビットコインくらいだろう。

一方、暗号資産関連企業は暗号資産規制の明確化を米国当局に求めている。米国ではSECと商品先物取引委員会(CFTC)で金融資産ごとに管轄が分かれており、暗号資産は証券なのかあるいはコモディティなのかという議論とともに、どちらが暗号資産を管轄するのかが今でも定まっていない。

このように米国当局VS暗号資産関連企業の対立が激化しているが、正直なところどちらの立場も間違っておらず、関係者同士のコミュニケーション不足が不透明な状況を生み出している。米国の暗号資産規制環境がクリアになるまでは相場も重苦しい雰囲気が続きそうである。