先週、上海証券取引市場、深セン証券取引市場、香港証券取引市場は揃ってかなりきつい下落が見られ、50日移動平均線も下回っていることから、株価は短期的に調整入りした可能性が高くなっています。下落の背景には中国政府が不動産に関する新たな規制を発表するのではないかという懸念があります。中国の景気回復と、初回住宅購入者の支援政策などによって2012年12月に中国主要70都市のうち54都市で平均住宅価格が前月比から上昇していました。そして、2月20日には中国の内閣にあたる中国国務院が不動産引き締め策を継続することを明言。これをキッカケとして、中国の不動産株が下落し、相場の下落を牽引しました。

しかし、注目したい点は、中国国務院が「中国は都市化が急速に進んでいる時期にあり、短期的には一部の都市で住宅が供給不足になるのは避けられない。したがって、住宅の実需を抑えるのではなく、投機、投資としての住宅購入を抑えることが、不動産市場コントロールで堅持しなければならない基本政策である」と強調している点です。つまり、不動産引き締め策は継続されるものの、それは2軒目以上の投機・投資目的の不動産購入を抑える政策になるであろうということです。そしてその一方で中国国務院は、一般商品住宅と供給用地を増やし、保障性住宅建設を加速するとも指摘しています。これは投機向けではなく、実需向けの不動産を開発している不動産大手企業にとっては逆にチャンスの筈です。

その他のニュースとしては、中国銀行が定例公開市場操作で、週間では過去最高のネット9100億元を銀行システムから吸収する見込みで、これが流動性の縮小につながると懸念されたことがあります。その上、米連邦準備制度理事会(FRB)が1月議事録で債券買い入れプログラムを予想よりも早く解消する可能性を示唆したことから、ドルインデックスが上昇し、反相関関係にある資源価格が下落。これらにより、21日の上海証券取引市場、深セン証券取引市場、香港証券取引市場は金融株、資源株を中心に大きく下落しています。ただし、前述の不動産問題については実需需要は拡大し続ける見通しであり、債券買い入れプログラムを予想よりも早く解消する可能性については先週末、FRB参加メンバーが議事録の懸念を打ち消す発言をしています(それを受けて米国株は上昇しています)。したがって、上海証券取引市場、深セン証券取引市場、香港証券取引市場は現在の調整をこなした後、再び上昇基調に戻れると見ています。

コラム執筆:戸松信博