日経平均の高値更新とモメンタム低下の意味

日経平均は連日でおよそ33年ぶりの株価水準を更新しており、上昇トレンドが継続しているのが分かります。また、上昇の勢いが強く続いていると感じている人も多いかと思われますが、実はそこが問題となります。

なぜなら、ここでテーマとなっている勢いを教えてくれるモメンタムは決して強い状態が続いているとは言えないからです。株価は高値を更新していますが、勢いを表すモメンタムは低下しています。

この意味を考えてみたところ、株価は高値を更新していますので、上昇トレンドが継続中と言えるわけですが、一方でモメンタムは前回のコラムで解説したピークアウトから低下しているのが分かります。

高値を更新していることから、感覚的には上昇の勢いが強いと感じてしまうかもしれませんが、モメンタムが低下しているため、上昇の勢いが鈍っていることを示しているわけです。

モメンタムは当日の終値とN日前の価格の差分ですが、高値を更新しているにも関わらず、モメンタムが低下しているということは、上昇の勢いの判断材料となる、N日前との価格差が縮まっていることになり、車でいえば、スピードが落ちていることを示していることになるわけです。

したがって、感覚的には強い上昇が続いていると感じられても、実際の勢いは低下していることになり、テクニカル分析では注意が必要ということになります。

【図表】日経平均株価(日足)
出所:i-chartより株式会社インベストラスト作成

高値圏でのモメンタムの低下と5日移動平均線

また、日経平均が33年ぶりの高値圏で推移する中で、上昇スピードが鈍ってくるとどのようなことが考えられるのでしょうか。

株価は業績の他に需給でも決まるとされますが、上昇の勢いが鈍ってくると買いのエネルギーが後退していると考えられます。利益確定売りが出てきた場合に、株価は売り物を吸収できず反落に向かうことが考えられ、注意が必要になります。

そのため、モメンタムが今後も低下を続けるかどうかが注目ポイントになると思われます。また、短期的なトレンドを示す5日移動平均線の向きと位置関係にも注意が必要です。

日経平均は33年ぶりの高値を更新する中、トレンド分析から見ても5日移動平均線の上昇角度が徐々に緩やかになってきていますが、この上昇角度の鈍化もトレンド転換の可能性を示唆していると考えることができます。

したがって、5日移動平均線を下回ったり、下回った5日移動平均線が下向きに変化して株価の上値を押さえる抵抗になったりするようですと、短期的なトレンド転換に繋がり、25日移動平均線辺りまで下落したり、5月上旬に発生した窓を埋めることが視野に入ってくるのではないかと思われます。

一方で、5日移動平均線上を維持するとともに、モメンタムが再上昇するようですと、「逆行現象」が打ち消されて、高値更新が継続しそうです。高値圏で推移する日経平均ですが、上昇の勢いが低下していますので、高値掴みや売りそびれることが無いよう注意したいところです。