モトリーフール米国本社、 2023年5月28日 投稿記事より

主なポイント

・エヌビディアは、ゲーム中心の企業からAIおよびデータセンター向けソリューションのリーダーへと変貌を遂げた
・データセンター向け売上高は、今や全社売上高の半分以上を占め、ゲーム部門の落ち込みを補っている
・同社の成功は、自社を含む先人の偉業の上に成り立っている

大きく実を結びつつある、AIへの大胆で長期的な賭け。エヌビディアはもはや、ゲーム専門企業ではない

今のエヌビディアはもはや、一昔前のエヌビディアではありません。新生エヌビディアは、ある種の怪物です。

10年前、エヌビディアと言えばゲーム専門企業でした。確かに、高性能のコンピューティングカードであるNvidia Teslaは2012年5月に発売され、第3世代モデルも発売間近でした。しかし、2013年の時点では、それはあくまでサイドメニューにすぎず、当時の経営陣は、データセンター関連製品の業績を決算報告書に別項目として記載することもしませんでした。エヌビディアの事業セグメントは1つだけで、デスクトップPCやノートPC向けの画像処理装置(GPU)が事業のほぼすべてを占めていました。

その後、2018年春になると、新たな戦略の種が花開き始めました。2018年5月に発表された2019年1月期の第1四半期(2018年2~4月期)決算では、売上高のうちゲーム事業が占める割合は54%となり、データセンター事業は2番目に大きい22%を占めるまで成長していました。

そして、人工知能(AI)プロセッサーが放つ明るい未来の香りが漂い始めていました。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、5年前の決算発表の際に次のように述べました。

「我々のチャンスの中心は、従来のコンピューティング需要が落ち込む一方で、AIのコンピューティング需要が驚くほど伸びていくことにあります。我々が開拓したGPUのコンピューティングアプローチは、この空白を埋めるのに理想的です。そして、TensorコアGPUを開発したことで、AI時代を支える我々の強力な地位は一段と強くなりました」。

それから5年後:AIがもたらした大変革

今は2023年春です。AIは爆発的ブームとなり、エヌビディアはAI革命における最大の勝者の1人となりました。

2024年1月期第1四半期(2023年2~4月期)の売上高は前年同期比13%減となりましたが、減収の原因は、景気循環に伴うゲーム部門の減速にあります。データセンター向け売上高は前年同期比14%増となり、全社売上高の60%を占めました。

かつてサイドメニューだったAIは、今や新事業の主役となりました。こうした企業向けの機会は、優先度が弱まりつつある消費者向けのゲーム用チップよりも、はるかに安定した収入源となるはずです。

長期トレンドや、先見の明とも思えるフアンCEOのコメントからも分かるように、このようなシフトは長い時間をかけて進んできました。長年にわたって展開を注視していれば、世の中の流れが大きく変わるプロセスにおいて、エヌビディアが一貫した役割を担ってきたことに気付いたはずです。

例えば、オープンAIが開発した「generative pre-trained transformer(生成型事前学習トランスフォーマー)」の第3バージョンであるGPT-3を見てみましょう。このシステムは、1万個以上のNvidia Tesla V100プロセッサーを搭載したスーパーコンピュータで、マイクロソフト(MSFT)が構築した深層学習システムと連携して学習を行いました。

エヌビディアが今後もAI分野で優位に立つためには

GPT-3は、ここ数ヶ月でコンピューティング界を席巻したCharGPTチャットボットのベースとなったものです。確かに、これは一夜にしてセンセーションを巻き起こしたかもしれませんが、開発には何年もかかっています。エヌビディアは初期のGPT-3を訓練するのに、2020年に1万個のプロセッサーを出荷しました。言い換えれば、CharGPTをめぐる現在の騒動は、エヌビディアの協力なしにはあり得なかったのです。つまり、エヌビディアを市場の急成長に便乗した新参者と呼ぶのは大きな間違いです。それどころか、エヌビディアは、今後もAI革命を推進し続ける態勢を整えています。

オープンAIとの提携持続により、エヌビディアには今後も、AI関連で多額のGPU売上高がもたらされるはずです。GPT-4は、GPT-3の1,750億個に対し、100兆個の深層学習パラメーターに依存すると言われています。第5世代以降はほぼ間違いなく、さらに大規模になり、より優れたデータ処理を持つプロセッサーが求められるでしょう。エヌビディアは、高まる要件に対応するために、改良されたソリューションを提供する準備が整っています。旧型のV100チップも十分に強力ですが、最新のH100モデルは、10倍近いスピードでAIデータを処理することができるほか、より大規模なマルチプロセッサに対応した、高度な相互接続機能をサポートしています。

エヌビディアが唯一のサプライヤーではないでしょうが、同社はこの初期段階において既に圧倒的にリードし、特許に守られた技術面での優位性もあります。ゲーム用グラフィックスのスペシャリストからAI関連の巨大企業へと変貌を遂げたエヌビディアの道のりは、先見の明と戦略的進化の力を物語っています。

時価総額1兆ドル企業の仲間入りを目前にして、エヌビディアの革新的発展が終わることはなく、今後も価値を生み出し続けると思われます。現在はバリュエーションが割高で、即座に買いとは言い切れませんが、高成長銘柄を探しているのであれば、エヌビディアには検討する価値が十分にあると思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Anders Bylundは、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はマイクロソフト、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。