モトリーフール米国本社、2023年5月23日 投稿記事より

主なポイント

・アップルとブロードコムが、複数年で数十億ドル規模の契約締結を発表
・ブロードコムは多数の5G関連部品を開発する予定
・この動きは、アップルのサプライチェーンにおけるリスク低減につながる

アップルがブロードコムの株主に大きな救いの手を差し伸べる

2018年初め、アップルは米国経済に対して3,500億ドルの貢献をする計画を発表しました。同社は当時、一連の投資が「雇用創出に多大な影響を与える」分野に集中的に行われると述べました。具体的には、従業員の直接雇用、国内の製造業やサプライヤーへの支出や投資、「急成長するアプリ経済」の促進などです。

同社はその後、ノースカロライナ州での新社屋の建設や5G技術への投資拡大などで、5年間の投資額を4,300億ドルに引き上げました。

今回、アップルは公約の実現に向けて、また大きな一歩を踏み出しました。米国内で製造される自社デバイスで使用される部品を開発するため、半導体メーカーのブロードコムと複数年で数十億ドルに上る契約を結んだのです。

5Gに注力

アップルは5月23日に発表したプレスリリースで、5Gの無線周波数に関連するさまざまな部品の開発をめぐり、ブロードコムと大型契約を締結したことを明らかにしました。ブロードコムが開発を予定している技術の1つは薄膜バルク音響共振器(FBAR)フィルターで、これは干渉を低減しながら、受信と送信の無線信号を集中させる精密な電子フィルターであり、特定のデバイスを相手とする通信のみを確実に送受信することができます。

契約では、その他にも多くの「最先端の無線接続部品」が対象とされています。アップルは、FBARフィルターが、「ブロードコムの主力拠点があるコロラド州フォートコリンズなど、米国内の複数の主要なハイテクハブで設計・製造される」予定であることを明らかにしました。アップルはまた、フォートコリンズ工場で既に1,100人の雇用を支えており、「今回の契約により、ブロードコムは重要な自動化プロジェクトおよび技術者やエンジニアのスキルアップへの投資を継続できるようになる」と述べています。

ブロードコムは規制当局への提出書類の中で、「アップル製品で使用される、無線周波数やワイヤレス技術に関する特定の高性能部品やモジュールの供給に関して」、アップルと複数年にわたる2つの契約を締結したことを明らかにしました。提出書類には、契約の具体的な金額については書かれていませんでした。

アップルは2020年に5G対応iPhoneを発売して以降、iPad ProやApple Watchといった他のデバイスにも5G技術を拡大しています。

ブロードコムの投資家は歓迎

今回のニュースは、年間売上高の大部分を占めるアップルからの売上を失うかもしれないと当然のごとく懸念していたブロードコムの株主にとって、大変嬉しいニュースです。ここ数ヶ月、アップルがブロードコムと決別し、Wi-FiやBluetoothのプロセッサの多くを自社設計のチップに切り替える計画であるとする複数の報道がありました。

ブロードコムにとってアップルは最大の顧客であり、2022年10月期の年間売上高の20%近く、約70億ドルをアップルが占めるとみられています。ABバーンスタインのアナリスト、ステーシー・ラスゴン氏の推定に基づくと、報道が正しければ、ブロードコムの売上高に10~15億ドルの影響が及ぶ見通しです。

アップルにとっての意味合い

多くの企業と同様に、アップルもパンデミックの間にサプライチェーンや物流の問題に直面しました。同社は中国のメーカーへの依存度が高く、サプライヤーが集中していることから、ここ数年は広範囲にわたる製品の遅延に悩まされていました。

重要な年末商戦シーズンに看板商品であるiPhoneの供給が不足したことや、通常よりも長い出荷遅延に見舞われたことを受け、アップルはそれ以降、中国への依存度を軽減するために、サプライチェーンの再構築に取り組んでいます。アップルはベトナム、マレーシア、インドといった新たな国に製造拠点を拡大することで、リスクの低減を図っています。同社はさらに、一部の半導体の製造を、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)(TSM)がアリゾナ州に建設中の新工場に移す予定です。

今回の契約に伴うアップルへの影響を数値化することはできませんが、同社が今後起こり得るサプライチェーンの混乱に備えて、リスクの低減を進めていることの新たな証拠に他なりません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Danny Venaは、アップルの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアップル、TSMCの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、ブロードコムの株式を推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。