マネックス証券では、資産承継や相続対策をテーマとしたオンラインセミナーを多数実施しており、参加者からの質問に回答するコーナーを設けています。そこで寄せられた質問の中から、読者の方々に役立ちそうな内容をいくつかご紹介します。様々な質問をいただいていますので、参考になるケースがあるかもしれません。

Q:遺産を母親がすべて相続したい場合、どうしたらよい?

父が亡くなり、相続人は母と子3人で資産は自宅と株式があります。私は相続人全員で分割したいと思っていますが、母が全てを相続したいと言います。どうしたらよいですか。

回答

お母様はご自身が住んでいる家であればそのまま住み続けたい、老後も不安なので全て相続したいという気持ちがあるのではないでしょうか。他の相続人がそれでよいのであれば問題ないでしょう。ただ、相続人がご事情などによりどうしてもご自身の分も必要ということであれば、お母様にその事情を伝えて協議することですね。

税金面で言えば、お母様が亡くなられた場合の二次相続を踏まえると、一次相続で分割しておいた方が有利なケースがあります。

Q:子に毎年同日、同金額を贈与する場合、どうするべき?

毎年、決まった日に、子に110万円ずつ贈与したいと思います。贈与契約書を作成しておけば問題ないですか。

回答

毎年同日、同金額を与える場合は定期贈与とみなされ、110万以下であっても課税される場合もありますが、都度契約書を交わしておけば問題ないと思われます。

Q:家族信託について

家族信託について質問です。親が所有している財産の中で不動産だけ契約する、特定の金融資産だけ契約する、といったことは可能ですか?

回答

可能です。ただ、実際に不動産だけとすると、そこから出てくる費用(修繕費や固定資産税など)もあるので、金銭も合わせて行うのが一般的かと思います。

Q:法定相続人の考え方

叔母は独身で叔母の両親は既に他界していますので、叔母の法定相続人は叔母の兄弟またはその子になると思いますが、その認識で正しいでしょうか。また、行方がわからない相続人がいる場合、相続手続きはどのように行えばよいでしょうか。

回答

法定相続人の考え方はご認識のとおりです。また、行方のわからない相続人がいる場合は遺産分割協議が進められないので、家庭裁判所にて不在者財産管理人の申し立てが必要です。不在者財産管理人が選任されると不在者である相続人の代理人として、他の相続人と遺産分割協議を行うことになります。

Q:遺言書があれば遺産分割協議は不要か

すべての資産と分け方を遺言書に記入しておけば、相続人間で遺産分割協議は不要ですか?

回答

有効な遺言書であれば不要です。分割協議を不要とするために遺言書を作成しますので、全財産と割当が明確に記載されていれば、遺言の執行で完結します。なお、遺言書は記載要件通りでないと無効となりますので、その点にはご注意ください。

Q:離婚した場合の遺産相続

離婚した父親(養育権は母親)の遺産相続は、子(3人)に相続されるのでしょうか。独り身の父親の遺言書がない場合、法定相続人は3人の子だけで離婚した母親は相続権なしという認識でよいでしょうか。

回答

ご認識の通り、相続人は子のみとなります。

Q:自筆証書遺言の検認について

自筆証書遺言は検認必要ですか?

回答

必要です。ただし、法務局での自筆証書遺言保管制度をご利用される場合、検認は不要です。

Q:生命保険の考え方

金融機関より、相続税を支払うための保険を勧められていますが、どのように考えればよいでしょうか。

回答

生命保険であれば亡くなると保険金が受け取れるので、それを相続税に充てることも選択肢として考えられます。生命保険ですと、相続人1人につき500万円の非課税枠もありますので、そういった観点で勧められたかもしれませんね。

Q:相続時の換価分割について

相続で不動産を換価分割するケースがあると思います。一旦、不動産を相続人全員の共有名義とし、売却が先延ばしになった場合、何か問題はありますでしょうか。

回答

例えば、相続税が発生する場合、すぐに売却できず納税資金に困る可能性が考えられます。また、売却する前に共有名義の方が亡くなった場合は、さらにその方の相続人が加わるためトラブルになるケースも考えられます。

Q:相続する土地・家屋に借金がある場合は?

相続する土地または家屋に借金が残っていた場合はどうなるのでしょうか?

回答

住宅ローンであれば基本的に団体信用生命保険(団信)で返済されるかと思います。不動産を引き継ぐのであれば借金も引継ぐことになりますので、負債が大きければ相続放棄や限定承認といった方法もあります。

Q:「小規模宅地等の特例」制度について

小規模宅地等の特例の土地評価額8割減引きについての説明をお願いします。

回答

非常に細かい要件がたくさんありますので、概略として簡単に述べますと、亡くなった人が住んでいた土地を相続する場合、評価額に対して8割引の特例が適用されるものです。配偶者は無条件で対象、同居していた親族も適用されますが、相続税の申告期限まで居住することなどの条件もあるので注意が必要です。

Q:遺言書の作成について

夫婦と子ども2人の家族です。自分が先に死亡する場合と妻が先に死亡する場合で遺言の内容が異なりますが、遺言書は場合分けして2通作成することは可能でしょうか。

回答

2通作成というより、1つの遺言書に予備的な項目を加えるのが一般的です。

例えば、
第一条:私が亡くなったら妻に財産を渡す。
第二条:もし同時または妻が先に亡くなった場合は〇〇に渡す。
といったかたちで作成します。

Q:遺言書の保管制度について

遺言書を一度保管した後、内容を変えたくなった場合、変更は可能でしょうか。

回答

法務局にて手続きすることで、何度も変更は可能です。

Q:相続時精算課税制度と相続放棄、併用できる?

相続時精算課税制度と相続放棄は、併用できますか。

回答

生前贈与された財産があり、その金額が相続税計算時の基礎控除額を超えている場合、相続放棄しても相続税が発生する場合もありますが、併用自体は可能です。

まとめ:
今回は相続に関する様々な質問を紹介しました。普段あまり耳にしない内容も含まれているため、少し難しく感じられたかもしれませんが、これらは相続に関する基本的な事項です。ご自身の状況によって回答が異なりますので、サポートが必要な場合は専門家に相談しましょう。