米国では企業による第1四半期の決算発表が進んでいます。そんな中、S&P500は先週4月18日に4,169.5ポイントと、ほぼ2ヶ月半ぶりの高値をつけました。ただし1週間でみると、S&P500は0.1%下げ、ナスダック100は0.6%の下げと、マーケットはほぼ横ばいで週を終えました。

決算発表については、これまでS&P500採用銘柄のうち87社が決算発表を終え、前年比で1.58%の減益となっており、決算発表前の4月の半ばの予想である7.5%の減益を上回っています。その発表済み企業のうち54%の企業が事前予想を上回り46%の企業が下回っています。懸念されていた金融機関の決算発表も無事通過しました。先週発表された決算も一部の例外を除き、恐れられていたほど悪くはなかったと言えます。

テスラ、決算発表を受け1日で10%株価下落。今後の見通しは

先週のマーケットで下げが目立ったのはテスラ(TSLA)です。希薄化後EPSについては85セントと発表、前年同期の1.08ドルと比べると22%の減益です。同社は、新工場の稼働率低下による利益率の圧迫、原材料、商品、物流、保証費用の増加、環境クレジット収入の減少などが、前年度からの減益の要因だと説明しています。

ただ、マーケットのコンセンサス予想は84セントであり、今回減益になることは予想されていました。むしろマーケットは、2023年に入り6回の値下げを行ってきたテスラの利益率がどうなっているかに注目していました。注目の利益率については、1年前の2022年第1四半期に29.1%、同年第4四半期に23.8%であったのに対し、マーケットの予想は21%でした。実際は、20%を切る19.3%となったのです。

では、なぜ、テスラは6回も値下げし、収益性を犠牲にするアグレッシブな戦略を取ったのでしょう。それは、目先の利益を犠牲にしても、長期的に勝てるテスラにしかできない仕組みがあるからだと思います。同社は自動車会社の中で最初に完全自動運転を可能にするだろうと言われています。テスラ車には、FSD(完全自動運転)ソフトウェアが搭載されていますが、それが将来レベル5の完全自動運転を可能にしていくという見通しです。

同社のイーロン・マスクCEOによると、FSDだけで将来的に10万ドル(約1300万円)の価値があるとしています。完全自動運転が可能となった暁には、テスラ車のオーナーは、アップルミュージックのサブスクリプションモデルのように毎月利用料を払うことで自分のテスラ車を自動運転で運転することができるようになるのです。

現在FSDのフル機能を使おうと思うと毎月199ドル(約27,000円)、年間では約2,400ドル(約32万円)払うことになりますが、その粗利益率は7割を超えると言われています。つまり、今利益率を犠牲にして車を売ったとしても、将来的に自動運転が可能になると、テスラは利益率の高いサブスクモデルで新たに稼ぐことができるということです。これは売ってしまったら自動車会社にはその後収益が入らない従来型のモデルと大きな違いがあります。

テスラには将来的にロボタクシーと呼ばれる自動運転タクシー事業を行う計画があり、同社のオーナーは自分が使っていない時間帯に、自分のテスラ車を自動運転タクシーとして貸し出し、収入を得ることができるとしています。

完全自動運転を行うにあたっては、政府の規制等のハードルがありますが、自動運転にした方が交通事故は減るだろうというデータがあります。世界では1日3,700人が交通事故で亡くなっていると言います。米国では65,200マイルあたりに1回の割合で交通事故が起きますが、現時点でのテスラのオートパイロット技術を使って運転すると485万マイルあたりに1回しか事故が起きないそうです。完全自動運転が可能になった世界では、交通事故が起きる確率は減っていくことが考えられます。

今週のGAFAMの決算発表がマーケットの方向性を決めるか

市場全体の方向性に大きく影響を与えるのはGAFAM企業のうちアルファベット(GOOGL)、アマゾン・ドットコム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、メタ・プラットフォームズ(META)の決算発表だと思います。

S&P500の時価総額におけるGAFAMのウェイトが高すぎることを問題視する見方があります。GAFAM企業の株価は2022年に金利上昇の過程で大きく下落しましたが、2023年に入りS&P500のリターンを上回り上昇、市場全体の上げを牽引してきました。今週発表される予定のGAFAMのアップル(AAPL)を除く4社だけでS&P500採用銘柄の時価総額36.7兆ドルのほぼ14%相当の 5兆ドルを占めています。

2023年に入りS&P500は3,800から4,200のトレーディングレンジで推移していますが、今週のGAFAM4社、そして来週のアップルの決算の内容、また来期以降のマネジメントによるガイダンス次第では、S&P500のトレーディングレンジの上限である4,200を抜けてくる可能性も高いと見ています。

今週注目の米国企業の決算発表

今週、注目の決算発表は以下の通りです。

4月24日(月):コカコーラ(KO)、ワールプール(WHR)

4月25日(火):スリーエム(MMM)、ゼネラルモーターズ(GM)、マクドナルド(MCD)、ペプシコ(PEP)、センサータ・テクノロジーズ・ホールディング(ST)、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、ベライゾン・コミュニケーション(VZ)、アルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、ビザ(V)

4月26日(水):ボーイング(BA)、ゼネラル・ダイナミックス(GD)、メタ・プラットフォームズ(META)、ユナイテッド・レンタルズ(URI)、ウェースト・マネジメント(WM)

4月27日(木):キャタピラー(CAT)、マスターカード(MA)、モービルアイ・グローバル(MBLY)、アマゾン・ドットコム(AMZN)、インテル(INTC)、モンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)

4月28日(金):シェブロン(CVX)、コルゲート・パルモリーブ(CL)