国内宇宙開発ベンチャー初の上場、ispaceのビジネス戦略

宇宙開発ベンチャーのispace(9348)が4月12日に東証グロース市場に新規上場した。初日は買い殺到で値つかずとなり、2日目の13日に公開価格254円に対して3.9倍の1,000円で初値を付け、その後も大きく買われる場面があった。まさにロケットスタートとなっている。

同社は月面資源開発を支援する新興企業。将来的には月面着陸船(ランダー)や月面探査船(ローバー)に顧客の荷物(ペイロード)を搭載して、月に輸送するペイロードサービスを展開していく予定だ。

現在、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」に取組んでいる。HAKUTO-Rでは、今回の打ち上げにより「ミッション1」である日本初の月面着陸を目指している。「ミッション2」では、その後に搭載したローバーでの月面探査を目指す。そして、「ミッション3」では、さらに高頻度でランダーとローバーでの月面探査を実現し、荷物の月への輸送、月面のデータ取得などのミッションを行う予定としている。

スペースX、月面着陸は最短で4月26日の予定

2022年12月に自社開発した無人月面着陸船を搭載したロケット「スペースX」が12月11日に米フロリダの発射場から打ち上げられた。打ち上げは成功し、現在月に向かって順調に飛行中だ。月面着陸が成功すれば、民間では世界初となる。

同社では上場初日となる4月12日に、ミッション1の月面着陸予定日を最短で4月26日午前1時40分(日本時間)に設定したと発表した。なお、運用状況に応じて、着陸予定日は4月26日夜、5月1日、5月3日に変更される可能性もあるとしている。

着陸船は高さ約2.3m、幅2.6mで、重さは燃料がカラの状態で340kgほどになる。八角柱に近い形状で、着陸の際には細い棒状の支柱4本で支える。

今回はispaceのランダーが月面着陸後に、月のレゴリス(岩石の表面にある堆積層)をランダーのフットパッドで採取する予定となっている。その後、NASAへ月のレゴリスの譲渡が行われる。これが実現すれば、民間事業者による月面での宇宙資源の商業取引として世界初の事例になるという。そこで、今回は宇宙開発市場に関連した銘柄をピックアップする。

タカラトミー(7867)

JAXA(宇宙航空研究開発機構)などと共同開発した超小型の変形型月面ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」が、今回のispaceのランダーに搭載されている。

同社では4月13日に、「SORA-Q」の原寸大モデル「SORA-Q フラッグシップモデル」を9月2日から一般販売すると発表している。専用アプリを使って操作し、画像撮影もできるとしている。価格は3万3,000円など。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年4月20日時点)

日本特殊陶業(5334) 

2019年に「HAKUTO-R」のミッションでコーポレートパートナーとして参画。同社が開発する全固体電池を搭載し、月面で初となる全固体電池の実証実験を行う予定である。

月面では夜間などにマイナス150℃以下の超低温になり、液体のリチウムイオン電池の電解液では凍結してしまい、これまでの熱設計では適応することができないという。しかし、同社の全固体電池は有毒ガスが発生せず、大型化も可能としている。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年4月20日時点)

高砂熱学工業(1969)

空調工事大手。2019年にispaceのコーポレートパートナーになった。2020年8月にispaceに出資。当時の発表資料では「ispaceが月面に輸送するランダーの中に、当社が開発する水の電気分解装置を搭載し、月面着陸後に水の電気分解の実証に加え、世界初となる月面環境での水素と酸素の生成を目指して挑戦する」など記載している。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年4月20日時点)

スズキ(7269)

ispaceに出資。「HAKUTO-R」のコーポレートパートナーでもある。ランダーに使われるボディ、着陸脚などの構造部品における構造解析で協力し、月面探査ミッションに貢献している。小型で軽量な四輪車を開発するノウハウがあり、着陸脚の衝撃吸収にとどまらず、主要な構造部際の設計支援もしている。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年4月20日時点)

日本航空(9201)

航空輸送事業で培ったノウハウを活かし、成田のエンジンセンターで行うランダー組立てに関する技術支援に加え、ランダーとローバーの輸送支援を通じて、民間月面探査への挑戦をサポートしている。

【図表5】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年4月20日時点)

シチズン時計(7762)

「HAKUTO-R」で使用されるランダーとローバーの開発のために、腕時計用に独自開発した素材「スーパーチタニウム」を提供する。スーパーチタニウムは軽く、美しく、キズが付きにくく、さびにくいという特長がある。純チタニウムの6倍以上の表面硬度を実現しているとしている。

【図表6】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年4月20日時点)

KDDI(9433)

2016年に「HAKUTO-R」のローバーの通信システムを共同開発すると発表。ローバーに搭載されたカメラで撮影した動画や静止画を地球に送信する。

【図表7】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年4月20日時点)