大規模な金融緩和を継続、これまでの金融政策の点検や検証に言及
植田日銀総裁は4月10日の就任会見にて大規模な金融緩和や現行のイールドカーブコントロール(YCC)を継続するのが適当との考えを表明しました。基本的には国会での所信表明などでも示された考えと変わりはなく、落ち着いたスタートとなりました。なお同日の岸田首相との会談後には、政府と日銀が定める共同声明に関して、デフレではない状態を作り出している適切なものであり、直ちに見直す必要はないとされました。
今後については物価が安定的、持続的に2%に達するかを見極めて適切なタイミングで正常化を進めていくこと、またそれは簡単な目標ではないと緩和継続の見方を示しつつ、難しい場合は副作用に配慮しつつ持続的な金融緩和の枠組みを探るとし、これまでの政策の点検や検証についても言及しています。これまでの思い切った政策による副作用を明確に認める点は、これまでの緩和一辺倒のスタンスからの変化とも伺えます。
欧米で見られる金融システム不安に対しては、市場は落ち着きを取り戻しつつあるとの認識を示しつつ、今後の状況についてしっかり注視するとの見方を示しています。早急な政策変更を抑制する新たな要因となった印象です。
会見を受け、ドル円は1円程度円安に触れました。そもそも会議ではないこのような会見で具体的な施策に言及することは期待するべきではないですが、YCCの撤廃について期待する向きからは、その時期についてのヒントが伺えなかったことで円売り反応となったようです。
短期的には金融政策が相場変動要因となるも中長期的には持続的経済成長が正常化のカギ
効果と共に副作用ももたらしてきた政策の修正について期待されるものの、その判断には時間をかける印象に加え、現在の経済見通しでは大枠として金融緩和が継続されます。論理的に判断し説明を分かりやすくすると述べてきており、サプライズを避けるコミュニケーションが期待される一方、YCCの修正など一部の措置是正は総裁の考えとしても微調整には向かないことから、短期的な動きとして引き続き金融政策が相場変動要因となりそうです。
一方でこのような副作用に配慮した修正が中長期的なトレンド転換となるかは疑問です。中期的には経済成長を取り戻せるのかが大切であり、現在の賃上げについても同様ですが、今後も持続的にみられるのか、期待しつつも状況を確認する時間が必要です。