新年度の東京株式市場は、欧米での金融システム不安を残しながらも、2024年3月期業績への期待や米金融政策転換期待などを背景に、堅調な相場展開が想定される。物色はハイテク株や好決算銘柄が軸となるだろう。
今後、半年間の日経平均株価は27,000円~3万円を想定する。外部環境が一段と改善すれば、2021年9月高値の30,795円が視野に入る可能性もある。
米国では“ハイテクシフト”が鮮明化
米国のシリコンバレー銀行の破綻に端を発し、スイスの金融大手クレディ・スイスの経営不安まで拡大した金融不安は、欧米当局の素早い対応で事態が収束に向かっている。
米国では預金保護や資金供給、クレディ・スイスはUBSによる買収が決まった。クレディ・スイスの永久劣後債「AT1債」が無価値になったことで、この損失がどこまで波及するのか気がかりではあるが、現状では徐々に沈静化するのがメインシナリオだ。
一方、一連の金融不安は米国の金融政策変更を早める効果がありそうだ。従来は利上げ長期化観測もあったが、金融問題が景気を冷やすとの見方が浮上しているためだ。市場では5月2~3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が最後の利上げになるとの見方や、場合によっては利上げなしとの観測がある。
米国では金利のピークアウトや、半導体市況の回復期待などで物色の“ハイテクシフト”が鮮明化している。3月末で第1四半期が終了したがハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は16.8%高となっている。
同期間のS&P500は7.0%高、ダウ工業株30種が0.4%高とその差が鮮明だ。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は同27.6%の上昇だった。その一方で、地方銀行の値動きを示すKBW地銀株指数は18.6%安だった。
日本でも半導体設備投資関連株に期待高まる
日本では5月8日に新型コロナウイルス感染症の扱いが「2類相当」から、季節性インフルエンザ並みの「5類」に移行することで、経済再開が本格化する見通しで、先行した欧米を追う展開となる。
訪日外国人観光客の拡大とも相まって、内需は力強い伸びとなりそうだ。なお、日本では4月28日に、日銀金融政策決定会合が開催される。植田新総裁としての初会合だ。現状維持が見込まれるが、記者会見で今後の方向性に対する発言があるかがポイントだ。
物色テーマでは日本でも半導体設備投資関連株が最右翼となる。通信量の増大に伴うサーバー需要の増加、対話のように回答する生成AI(人工知能)である「ChatGPT」の台頭など、先端半導体のニーズが増加しているためだ。
日米では先端半導体を受託生産する台湾企業TSMCの工場建設が進む。国内では九州に、5ナノ(ナノは10億分の1単位)メートルを扱う第2工場の建設報道もある。
その他、シリコンウエハの信越化学工業(4063)、前工程に強い東京エレクトロン(8035)、研削・研磨・切断装置のディスコ(6146)、検査装置のアドバンテスト(6857)などが注目される。
トヨタ自動車を筆頭に自動車関連株にも挽回の兆し
4月下旬から2023年3月期の決算発表が本格化する。自動車などの製造業は前期に、半導体不足や資材価格の高騰が売上高や利益の圧迫要因となってきた。2024年3月期はこれらの解消からの「挽回」が期待される。
挽回生産の代表格はトヨタ自動車(7203)で、既に2023年3月期の10~12月期は前年同期比で2ケタの増益に転じている。高級車レクサスの受注再開などもあり、今期は大幅な増益が見込まれる。
また、SUBARU(7270)、マツダ(7261)の完成車メーカーの他、デンソー(6902)、アイシン(7259)などの部品メーカーにも注目したい。タイヤのブリヂストン(5108)、車体に使われる高級鋼板の日本製鉄(5401)なども有望と言える。
安川電機などのFA関連株、ANAホールディングスなど経済再開関連株にも妙味
また、中国がコロナ禍からの経済再開が本格化している。2022年度は中国依存度の高いFA(工場自動化)関連は苦戦となった。米国の対中規制もあり、中国は自前での生産を急ぐ必要がある。今期のFA関連株は「回復」が有望だ。
ロボット制御技術の安川電機(6506)、NC(数値制御)世界首位のファナック(6954)、空圧機器のSMC(6273)、搬送装置のダイフク(6383)などへの関心が高い。
経済再開関連株ではANAホールディングス(9202)、東海旅客鉄道(9022)、高島屋(8233)などの主力銘柄の他、土産用限定菓子の寿スピリッツ(2222)、鉄道やホテル、遊園地などの西武ホールディングス(9024)、外食、ホテルなどを展開するロイヤルホールディングス(8179)などにも妙味がありそうだ。