上海総合指数はゴールデンクロスが発生、香港ハンセン指数はIT企業が株価動向に影響

2023年2月上旬~2023年3月上旬の中国本土市場・香港市場はまちまちの動きになっています。2023年2月6日終値~3月6日までの騰落率は、上海総合指数が+2.6%、香港ハンセン指数は-2.9%となっています。

上海総合指数は200日移動平均線を50日移動平均線が上に突き抜けるゴールデンクロスが発生し、そのまま株価は上昇して年初来高値を追っている状態です。香港ハンセン指数もゴールデンクロスは発生しているのですが、1月27日をピークに株価は下落基調となり、50日移動平均線を下に突き抜け、200日移動平均線の手前で反発したところです。

ここまでの香港株の流れを振り返ると、長らく中国株の下押し圧力となってきたゼロコロナ対策が終焉したことで、2022年10月に株価は底を打ち、世界的に中国経済再開での大幅反発を狙った投資マネーが中国株に入ったものと思われます。特にハイテク系の指数連動の投資信託へ流入したマネーがこれらの株価を引き上げたと想像します。

香港ハンセン指数は、テクニカル的に50日移動平均線から15%上方乖離した点は、いつもなら株価のピークとなり、一旦反落しやすいポイントです。しかし、今回はそこへ至るまでの下落が長期で大幅であった点と経済再開への大きな期待感、IT企業や不動産企業への監視強化の停止といった材料が重なり、2023年に入ってからさらに大きく上昇しました。

とはいえ、旧正月明け後になるとさすがにテクニカル的にピーク感が出て、2月に自律反落的に株価に調整が出たところがあると思います。

ちょうどそのタイミングで米国が中国の偵察気球を撃墜し、再び米中対立の緊張で楽観ムードが後退したことや、米国の長期金利が上昇して米国株も調整したこと、JDドット・コム(09618)がライバル企業との競合のために約2000億円規模の補助金キャンペーンを計画していることなど、中国IT大手の競争が激化しているといったニュースがでたことも株価が下がる材料になったと思います。

2023年度のGDP目標は5%前後、ゼロコロナ政策後の中国経済再開に期待

第14期全国人民代表大会(全人代)が3月5日に開幕しましたが、李克強首相は政府活動報告で2023年の国内総生産(GDP)成長率も目標を5%前後と設定しました。これは2022年の目標であった5.5%前後よりも低い数字で、市場平均予想よりも低い数字となりました。

もっとも、2022年10-12月期の実績GDP成長率は2.9%増でしたので、これから徐々に中国経済は加速していく方向にあるのは間違いないと思います。実際、3月1日に発表された2月の中国国家製造業PMIは52.6と前月実績の50.1や市場予想の50.7を上回り、ここ10年余りで最も高い水準に上昇しています。

ゼロコロナ政策が撤回され、旧正月後に工場が稼働して景気回復の勢いが増していることが分かります。同日に発表された中国国家非製造業PMIも56.3と市場予想の54.9や前月実績の54.4を超えています。

市場の期待は全人代からの政策発表に集まっています。前述の2月の中国国家製造業PMIは10年振りの高水準となっていますが、中小企業中心の2月のCaixin中国製造業PMIは51.6と市場予想の50.7や前月実績の49.2は上回っているものの、そこまで高い水準ではありません。また、Caixin中国サービス業PMIも55.0と市場予想の54.5や前月実績の52.9を超えましたが、中国国家非製造業PMIよりも低い数値となっています。

つまり、中国経済はまだまだ加速の余地があるということです。ただし、GDPの成長目標が5%前後に設定されたということは、中国政府が強力な金融政策や財政政策を打ち出してくる可能性が低下したことに繋がると思います。市場ではGDP成長率が5.5%増や6.0%増になるといった予想も出るほど期待されていました。

しかし、それでもゼロコロナ政策の影響を受けた2022年より中国経済が加速することは間違いなく、上海総合指数は年初来高値を追っているところです。香港株は調整局面に入ったところで、もう少し調整が続く可能性はあると思いますが、中国経済が2022年よりも回復してくる状況が明らかになってくれば、調整終了後は再び上昇基調に戻れるものと見ています。