リーマン・ショックでの痛手を機に、配当株投資に目覚め、年間配当額を着々と増やしている配当太郎さん。初の著著となる『年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資』(クロスメディア・パブリッシング)が、発売わずか3週間で3万部を突破するなど、配当太郎さんの投資手法が注目されています。配当太郎さんが約十数年間の投資経験を通じて学び得たことや銘柄選びのポイントなどをうかがいました。
●配当太郎さんプロフィール●
30代の個人投資家。学生時代に株式投資を始め、リーマン・ショックを経て、配当株投資に目覚める。大型株を中心に投資し、保有銘柄の9割は配当金が年々増える「増配銘柄」が占める。Twitterのフォロワーは8万7000人超(2023年3月現在)。毎日、配当株投資に関する情報を発信している。
暴落時に配当金の有難みを実感
――配当太郎さんは、いつ頃から、どんなきっかけで株式投資を始めたのですか。
10代の学生だった頃、時事ニュースや経済ニュースに興味があり、村上ファンドの村上世彰さんや、ホリエモン(堀江貴文)さんがメディアを騒がせている様子を見ているなかで、株式投資に関心を持ちました。
子どもの頃からお金を貯めることが好きだったので貯金していたのですが、「貯金以外にお金を増やす方法があるんだな」と知ったことで、自分でも株式投資をやってみたいな…と。それで、2006年夏に証券会社で自分の口座を開設しました。
最初は数十万円を投資し、すぐに利益が積み上がって、1ヶ月で100万円くらいの利益を得ることができました。
――当時は、どのような銘柄に投資されたのでしょうか?
投資を始めたのが「ライブドア・ショック」の後で、株価が底を打ち、いろいろな銘柄が値上がりしていた頃でしたから、ネットで話題になっている銘柄や値動きの大きい銘柄、雑誌に取り上げられている銘柄などを選んで買っていました。値上がりしそうな、いわゆる「イナゴタワー」が起きそうな銘柄に早い段階で乗って、利益を得ていました。市場環境が良かったこともあり、リーマン・ショックが起きるまでは、順調でした。
――リーマン・ショックが転機となったのですね。
はい。2008年にリーマン・ショックが起こって、痛手を被りました。私が保有していた株も値下がりして、資産が1/7から1/8くらいに激減しました。
その前年に起きたサブプライム・ショックの頃から相場が変調していて、資産が減っていたので「おかしいな、今後どうなっていくんだろうか」と思っていたのですが…。リーマン・ショック直後は、株価が暴落して売ろうにも売れない。何もできず、どうすればいいのか分からない状態でした。
――その状況からどのように資産を回復されたのでしょうか。
リーマン・ショックで金融市場が混乱している中でも数千円や数万円の配当金が入ってくる銘柄がありました。しっかり配当を出している企業は、着実に利益を出していました。精神的にも、金銭的にも辛い状況でしたから、わずかな配当金額でも「ありがたいなぁ」と、喜びをかみしめたのを今も覚えています。
株式相場全体が大きく下げていましたから、利回りの高い銘柄もありました。そこで「高利回り銘柄を買って、戦略を立て直そう」と気持ちを切り替えました。このことが機会となって「配当金」の意味と価値を考え直すことになり、現在の配当株投資へとつながりました。
「恩株」が「恩株」を生む好循環を作る
――増配銘柄が保有銘柄の9割を占めているそうですが、増配銘柄を探すポイントを教えてください。
基本的には、その企業が稼いでいるかどうか、株主還元に積極的な企業かどうかをポイントとしています。決算期(四半期ごと)に企業のウェブサイトでIR情報を確認し、増配実績や中期経営計画、配当利回り、配当性向を中心にチェックしています。
また、「○○ショック」のように相場全体が大きく下げ、「需給で必要以上に売られているようだ」など考えられる場合には、その銘柄を安く購入することで、結果的に取得利回りが高い状態になっていると思います。
――「配当利回り」だけでなく、「取得利回り」も確認されているのですね。
はい。株式を保有している企業の株価が上がると、配当金額が変わらなかったら、配当利回りは相対的に下がります。自分がその銘柄をいくらで買い、取得利回りがどのくらいかを把握していなかったら、「配当利回りが下がっているから、売った方がいいのかな?」と考えないとも限りません。そのため、配当という果実を手にするためにも取得利回りを認識することが大切だと考えています。
――保有銘柄の売却タイミングについては、どうお考えですか?
株は売るものではなく、増やすものだと考えているので、株価の動きは必要以上に気にする必要がないと考えています。
配当金を積み上げていって、投資した元本を回収してしまえば、その株はまさに「カネのなる木」のようなものです。株式投資の世界では、投資元本を回収済みの株を「恩株」と呼びます。
――どのくらいの期間をかけて、「恩株」から配当金を得る仕組みを築かれたのでしょうか。
「恩株」が「恩株」を生む好循環を築けている銘柄もあれば、そうでない銘柄もありますので、少しずつ元本を回収している状況と言えます。今の状態に至るまでには、10年近くかかったと思います。
主力銘柄は数銘柄に絞ってしっかり管理
――個別株について、何銘柄ほど保有するのが適切とお考えですか?
まず私自身のことを話すと、基本的には主力となる銘柄は数銘柄です。あとは、面白そうな銘柄や、応援したいと思う企業にも少し投資しています。
個人投資家の場合は、それぞれにリスク許容度が異なるので一概には言えませんが、投資額が1000万円くらいまでは、5~6銘柄、多くても10銘柄以内がよいのではないかと思います。しっかり銘柄を管理できるならば、それより多くてもいいかもしれません。ただ、資産が増えるまでは、5銘柄程度に絞って企業分析をしたほうがよいと思います。
――資産全体に占める株式の割合はどの程度でしょうか?
現金はほとんど持ちません。生活防衛資金の現金以外は、すべて株式に投資しています。
――生活防衛資金は、どれぐらい必要だとお考えですか。
これは一般論に過ぎませんが、会社員の場合ですと、生活防衛資金が100万円くらいあれば、なんとか生活できるのではないでしょうか。日本の会社員の平均年収が450万円ほどであると考えると、月々の給与は30万円くらいでしょう。その3ヶ月分は90万円ですから、10万円をプラスした100万円くらいが目安になるかと思います。
配当株を選ぶ4つのポイント
――配当太郎さんは、どのような観点で銘柄を選んでいますか。
著書でも紹介しましたが、配当株投資の対象にふさわしい企業を選ぶ際の基準として、主に4つのポイントを重視しています。
(2)業界の第1位と第2位の企業
(3)「3割」以上のシェアを持つ企業
(4)「ストック型ビジネス」の企業
参入障壁には、業界既存企業に優位性がある、法律的な規制がある、著しく商品の差別化が図られているという3つの要因があるため、新規参入が難しく、毎年しっかり利益を出すことができると考えられるからです。
そういった観点で見ると、総合商社、メガバンク、通信キャリア、保険といった業界が挙げられます。そのなかでも稼ぐ力が強い、業界首位と2位の企業で、業界内で3割以上のシェアを持つ企業が対象となります。
4つ目の「ストック型ビジネス」というのは、いったん契約すると、その契約が終わるまで継続して対価を得られるタイプのビジネスです。こういった業態の企業は継続的に利益を積み上げていくことが可能だと考えています。
この4つのポイントで見ていくと、
●メガバンク:第1位 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
第2位 三井住友フィナンシャルグループ(8316)
●商社: 第1位 三菱商事(8058)
第2位 伊藤忠商事(8001)
●保険 :第1位 東京海上ホールディングス(8766)
●通信キャリア :第1位 NTT(9432)
第2位 KDDI(9433)
第3位 ソフトバンク(9434)
が挙げられるでしょう。これらの銘柄には注目しています。
中小型株を選ぶ3つのポイント
――中小型株への興味はいかがですか。
私の保有銘柄の中心は大型株ですが、中小型株にも業績が良く、しっかり株主還元をする企業がありますから、それを探すことも配当株投資の醍醐味の1つだと考えています。
――中小型株を選ぶポイントについて教えてください。
中小型株については、3つのポイントで選んでいます。
(2)時代の流れを読んで、儲かりそうな企業
(3)毎日の生活の中から気になる企業
地元に特化した「稼ぐチカラ」のある企業を探すということもポイントです。例えば、沖縄セルラー電話(9436)もその1つです。
ただし、中小型株の場合には、購入のタイミングや株価の動向に注意する必要があると考えています。メディアなど取り上げられると株価が上がって「手遅れ」になる可能性がありますし、焦って飛びつくと割高になる可能性もあります。「株価がちょっと上がってきているけれど、それほど大幅な上昇ではない」という状況が買い時ではないかと思います。
>> >>【後編】「配当株投資がインフレに強い」理由とは?
※本インタビューは2023年2月21日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。