配当株投資は、淡々と続けることが大切
――ご著書で「1年間の配当金が100万円」がポイントだとおっしゃっていますが、その理由を教えてください。
1年間に100万円の配当金を得られると、資本収入として1つの柱になるからです。また、100万円を再投資すれば、そこからさらに数万円の配当金を得ることが可能になるでしょう。年間100万円以上の配当金があれば、リタイア後に国民年金と厚生年金以外の収入があることになり、安心できるのではないでしょうか。年間100万円以上の配当金を得られる頃には、株式資産も2000万円~3000万円になっているでしょうから。
――なるほど。「老後2000万円問題」への備えになりそうですね。長期的に配当株投資を続けるコツがあれば教えてください。
安く買うとか、高くなったら売るといったことを考えず、「年間目標配当金」に達するまで淡々と買い続けることが継続するコツだと思います。また、ある程度の資産規模(運用規模)になるまでは、リバランスも意識する必要はないと思います。
私は投資を始めてから今日までに「リーマン・ショック」や「コロナ・ショック」などの暴落を何度か経験しました。今後も「○○ショック」と呼ばれるものが起こるでしょう。そういった場合にも慌てず、配当株を淡々と買い続けることが大切だと思っています。
減配・無配への備え:四半期ごとに決算短信チェック
――減配や無配になるリスクにはどのように備えていますか?
四半期決算の発表時に決算短信を確認して、4つのポイントをチェックしています。
(2)「営業利益」は伸びているか?
(3)「純利益」は出ているか?
(4)「1株あたり利益(EPS)」は出ているか?
これらを確認することで、「増配になりそうだな」とか、「増配は難しいかもしれないけれど、減配にはならないだろう」など、自分なりの予想を立てて、今後の展開や次の一手を検討したりしています。
もちろん、予想通りにならないこともあります。その場合も「増配にはならなかったけど、前期と同じ金額の配当金を出しているなら問題ないかな」とか、「今期は特損を出したから、減配するかもしれないけれど、状況が好転すれば増配するだろう」など、自分なりに考え、企業の株主還元の姿勢を見ながら判断しています。
――配当収入の状況はいかがですか?
年々、着実に増えている状況です。配当株投資では、配当金を非課税で受け取ることができるメリットがある一般NISAも活用しています。2024年からの新しいNISAでは、「成長投資枠」が年間240万円に拡大されるので、積極的に活用していきたいですね。
インフレ環境下における配当株投資の底力
――ご著書に「配当株投資がインフレに強い」と書かれていました。そのように考える理由を教えてください。
インフレになるということは、その企業の商品やサービスの価格が上がっているということですから、結果的に企業の利益は増えるはずです。株主還元に積極的な企業であれば、増えた利益を株主に還元してくれるでしょう。そう考えると、原材料などの価格が高騰したときに、それを価格転嫁できる、川上にいる企業の株は、インフレに強いと言えると考えています。
日本株への投資を続ける理由
――ここ数年は米国株に注目が集まっていますが、配当太郎さんは外国株に投資していらっしゃいますか?
保有銘柄の9割以上は日本株です。日本人として日本に住み、暮らしていますから、日本の状況が一番よくわかると考えているからです。
一方で全く外国株に興味がないわけではなく、米国の有名な銘柄を少し保有しています。ただ、為替リスクも大きく難しいと思うので、日本株を中心に投資しています。
――日本企業は米国企業に比べて株主還元の意識が低いと言われることが多いですが、配当太郎さんはどのようにお考えですか?
私は日本の上場企業(経営者)が、株主の存在を意識し始めていると感じています。その1つとして、株主還元に積極的になっている企業が増えていることが挙げられます。例えば、自社株買いをしたり、持ち株を解消したりするのは、長期的に株式を保有してくれる個人投資家を大切にしたいと考えているからではないでしょうか。
とはいえ、すべての上場企業が株主を意識しているわけではありません。もっと株主の声に耳を傾けてほしいと思う企業もあります。
――投資に関する情報収集のポイントを教えてください。
情報収集は、インターネットで自分の知りたいことを調べるというのが中心です。企業情報を知りたいなら、その企業のウェブサイトのIR情報を見ればよいですし、株価動向もインターネットで確認できます。SNS等の情報を鵜呑みにせず一次情報に当たることが大切だと思います。その他、全体を俯瞰するために、日経新聞やテレビ東京などのメディアで、経済や金融関連のニュースもチェックしています。
大切なことは、どの情報も鵜呑みにしないこと。自分で考え、咀嚼して、「こうなるのではないか」と予測し、それをもとに次の打ち手を考え、行動することが大切です。1つの情報をもとに「正解はこうだ」と決めつけないように心がけています。
次世代への金融教育のヒント
――今後の資産の目標や、その資産で実現したいことはありますか?
特に目標は定めておらず、淡々と株式を買い足していこうと考えています。時間をかければかけるほど資産は増えていくと考えているので、可能な限り継続していくつもりです。将来的には次世代に金融教育を施して、自分が培ってきた資産形成の流れを引き継いでいけたら…と思います。
――金融教育として、家庭内でどのようなことができると思いますか。
「なぜ資産形成をするのか」「資本主義社会で生きていく中で必要なことは何か」「なぜ働いてお金を稼ぐのか」など社会の大きな枠組みを伝えた上で、お金とどう向き合うかを話すとよいのではないでしょうか。
要は、お金のことをブラックボックス化しないこと。ありのままを伝えていくことが大切だと思います。
自分の性格に合った投資スタイルを実現
――ご著書で「株式投資で利益を上げられるのは2つのタイプ(①才能のある人②配当株などに長期投資している人)しかない」とお書きです。このような分析に至った過程を教えていただけますか。
分析したり、断言したりできるほど多くの投資家を見てきたわけではありませんが、短期売買で利益を上げ続けることができる人は少ないだろうと考えています。それができる人は、並みならぬ努力だけでなく、特異な才能があるのだと思います。
私は短期売買で収益を狙う投資、FX、信用取引などを一通り経験してきました。しかし、そこには再現性がなく、自分の性格には向いていないことに気づきました。
その一方で、インデックス投資や配当株投資は、何か特別な技術や才能がなくても再現性を期待できるのではないでしょうか。時間を味方にすれば、特異な才能がなくてもある程度の結果を残すことができると思います。
――最後に、これから投資をはじめようと考えている20代、30代の方々へのアドバイスをお願いします。
個人投資家の強みは、何と言っても「時間」です。この強みを最大限活用するためにも、自身のリスク許容度と向き合いながら、可能な範囲で早い時期から投資を始めることが大切だと思います。
私自身も学生時代に投資を始め、失敗を経験したことで、相場変動への耐性もでき、「配当株投資」という自分が得意な投資スタイルに出会うことができました。「若い時の苦労は買ってでもしろ」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。ただし、苦労するために、自分のリスク許容度を超えた投資をすることは避けるべきでしょう。無理のない範囲で、淡々と投資を続けてほしいと思います。
――本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
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※本インタビューは2023年2月21日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。