パウエルFRB議長の発言を受け、売り優勢の展開

先週、S&P500は1.1%の下げ、ナスダック100は2.1%の下げとなりました。それでも年初からではS&P500は6.5%の上げ、ナスダック100は12.5%の上げとなっており、2023年に入ってから米国株は堅調に推移しています。

先週のマーケットの注目は、2月8日のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長のインタビューでした。2月3日発表の事前予想を大幅に上回った1月の雇用統計発表後のパウエルFRB議長の発言は、警戒されたほどタカ派的ではありませんでした。しかし、強い経済指標が継続すれば高い政策金利を維持するとの見方が示されたことで、年内利下げへの期待が後退し、マーケットは売られる展開となりました。

火花が散ったAI検索競争

先週のマーケットでもう1つ話題になったのは、GAFAMの人工知能(AI)検索競争でした。2月7日、マイクロソフト(MSFT)はマスコミ向けのイベントで、最近話題の高精度な対話型AI 「ChatGPT」について、現在業界2位の検索エンジンであるBing とWebブラウザEdgeに組み込んだ新バージョンを発表しました。

一方、グローバル検索市場で92.9%のシェアを誇るアルファベット(GOOGL)は、マイクロソフトのイベントの翌日8日にAIを使った自動応答ソフト(チャットボット)「バード(Bard)」のデモビデオをYouTubeで公開しました。しかし、そのデモでバードが不正確な回答を生成していたことが発覚。これを受け、アルファベット株は同日7.7%下落、1日で時価総額1,000億ドル(約13兆円)超を消失し、同社にとって大きな失態となりました。しかし、これを以てマイクロソフトが、目先大幅にグーグルのシェアをとるとは考えにくく、暫く時間がかかる可能性が高いと思います。

テスラ株、年初から大幅上昇

2023年に入って大きく上昇しているテスラ(TSLA)は先週も13.7%上昇、年初からの上げ幅は60%となっています。2月に入ってからバイデン政権が8万ドルまでのEV車の購入に対し税額控除が受けられると発表したことや、1月に行った値下げが功を奏しています。

7割以上の米国企業が決算発表、その結果は?

先週末までにS&P 500採用銘柄500社のうち346社が決算発表を終えており、前年同期比で2.33%の減益となっています。1週間前の段階での結果が3.1%の減益でしたから、若干ですが改善しています。

決算発表済みの企業のうち62%が事前予想を超え、36%の企業が事前予想を上回っています。ここ数年間の決算発表を見ていると7割以上の企業が事前予想を超えていますので、今回の6割という数字は決して良くありません。しかし、決算発表を受けた個別銘柄の反応は、それほど悪くないのです。

2021年第3四半期から2022年第3四半期までの間でS&P500の採用銘柄で事前予想を下回った企業の株価は、発表翌日に平均で2.5%から3%程度下落しました。ところが今回の決算発表で事前予想を下回った銘柄は平均で1%以下の下落に留まっているのです。つまり、今回の発表について投資家の懸念は大きかったものの、蓋を開けてみると恐れていたほど悪くなかったということなのだと思います。

今週のマーケットの注目:米CPI発表

予想を大幅に上回った雇用統計を受け、再度FRBによる利上げの継続を懸念しているマーケットにとって、今週の注目は14日(火)発表の米CPI(消費者物価指数)です。果たして今回の結果が雇用統計のように、利上げの継続を示唆するのか、それとも利上げの打ち止めを示唆するのかに注目です。

前回の12月のコアCPIは+0.3%でしたが、今回発表される1月のコンセンサス予想は+0.4%となっています。予想を下回る内容であれば、インフレリスク・プレミアムは低下し、株価のバリュエーションをサポートする展開となるでしょう。今回のCPI発表は投資家にとって今後のマーケットの方向性を決める注目のイベントです。

現在のCPIの項目については、項目の34%についてデフレ的な傾向があり、過去50年の平均30%を上回っているというデータがあります。デフレの兆しが経済指標に現れる可能性は高まっているように思います。